山形県あつみ温泉街に湧く名水「大清水」と老舗そば処で名水グルメ|ドーン太と名水Part77
先の記事、村上市山北地区で行われている「大川のコド漁」を見に行った日のこと。
家から近い浜辺で先にドーン太を走らせてガス抜きし、そこから海沿いを横長県北へと移動しているので、目的の大川に着いた時には昼を大きく回っていました。当然、そんな日の高い時間帯に鮭漁は行われておらず…。仕方ないので時間潰しを兼ね、最寄りの「道の駅あつみ」でトイレ休憩となりました。
トイレをお借りした後に道の駅内の物産館をウロウロしていると、地元あつみ温泉街のそば屋で作られたという干しそばが目に留まり、商品に添えられていたPOPの謳い文句に釘付けになりました。
「お店の隣に湧き出る名水」「名水で打ったそば」「老舗そば処」…
Google先生に尋ねてみれば、お店の閉店時刻は残り1時間無い午後3時。(2022年11月現在)
すぐさま道の駅周辺でドーン太と散歩していた丼父さんを探して名水とそば屋の情報を伝え、ダメ元でいいからと向かってみました。
山形県の名水に選定されている「大清水」
道の駅のお陰で急遽見つけた目的地その一は、「里の名水・やまがた百選」に選定されている「大清水」です。
道の駅あつみ前を走る国道7号から温海温泉を目指し、温泉街の案内に従って県道44号(余目温海線)に入ってからは温海川に沿ってひた走ります。開湯1,200年の歴史ある温海温泉街を抜けてさらに100mほど行ったところに「大清水公園」として整備された名水と、そのお隣には同名のそば処があるので初めてでもわかり易かったです。

ポケットパークとして整備されている大清水
山形県では地域の人々に育まれてきた優れた湧水を「里の名水・やまがた百選」として選定し、地域の活性化や観光誘客につなげています。
2021年(令和3年)10月の時点において、最上地域10箇所、置賜地域11箇所、庄内地域21箇所の計66箇所が「里の名水・やまがた百選」に選出されており、この度の「大清水」もそのうちの一箇所です。

名水 大清水
現地案内板より
この清水は、昭和天皇が「雨けむるみどりの山はしづかにて庭の山かと思いけるかも」とお詠みになられた温海岳を源流とし古来より大樹の根元よりこんこんと湧き出ています。この清水を詠んだものとして建部山比子碑と枕流碑があり、地元住民をはじめ遠方より名水を求めるお客様にも親しまれています。
平成十三年に大清水公園としてお堂、植栽、ベンチ等を整備しました。

大清水は温海岳の伏流水で、祠の下から湧き出しています。
江戸時代後期の庄内藩士であった安倍親任が記した
祠の横には歌人・建部山比子が大清水を詠んだ「夏かけて 消えぬ氷もあらなくに 冬より寒き 山の井の水」の歌碑が見られます。
平成27年度「里の名水・やまがた百選」選定
- 場所:山形県鶴岡市湯温海乙
- データ:水量 毎分100L|硬度 22㎎/L|PH 7.4|水温 11.5℃

祠に守られ、今は無き大樹の根元からこんこんと湧き出す水量は豊富。水温は通年11℃程度なので、秋のこの時期に流水口に手を差し入れても外気温と同じくらいに感じられました。
味は無味無臭。名水らしい、まろやかな軟水でした。

周囲は温海岳の急峻な山肌が迫り、県道44号(余目温海線)の下方には温海川が流れています。
江戸時代創業の老舗そば処「大清水」
道の駅あつみのお陰で急遽見つけた目的地その二は名水「大清水」に隣接してあり、名水グルメがいただける老舗そば処「大清水」です。名水「大清水」へ向かうきっかけともなった道の駅の物産館で発見した干しそばは、こちらのそば処「大清水」が提供しているものだったのです。
▲上の写真の県道脇にすでに店舗が見えていますが、大清水公園のすぐ隣に同名のそば処があり、名水を使った生そばが味わえるというのでたのしみにやって来ました。

創業は江戸時代末期の文政年間という老舗中の老舗。
「新そば」の文字も嬉しく、昼時を大きく外した午後2時半の初入店です。
店内の様子
そば処「大清水」は山形の親戚の家に遊びに来たような、そんな錯覚さえ感じる落ち着きある隠れ家的な一軒家でした。まず玄関に入って靴を脱ぐと左手に厨房があり、その反対にある二間続きのお座敷が客間となっていました。

奥の座敷は座卓、道路に面した座敷は低いテーブル席で、どちらの部屋も畳みの縁が「いろはにほへと」と遊び心ある仕様。大清水公園を眺めながら食事ができるお一人様席もありました。
ご夫婦で営む店なので、お茶などはセルフサービスになります。
私が座った窓側の座敷には温かいお茶が置かれていたのでそちらを利用しましたが、奥の座敷には冷たい飲み物が用意されていたようでした。中身は未確認でしたが、これが先ほどの名水であったら嬉しい限りですね。
メニュー
メニューは、せいろそば、天せいろそば、とろろそば、そねそば。サイドメニューは天ぷら、にしん棒煮。裏面は温かいそばとなっていました。
山形県の中でも温海温泉周辺ならではなのが「そねそば」ですが、そそっかしい私は値段を1万1,700円と勘違いしてしまい、今回は注文するのを見送ってしまいました。
よく見れば、本来の値段は2,700円で(汗)3人前程度のそばが「そね」と呼ばれる器に入って提供されるそうです。新潟でいうところの「へぎ」のようなものなのだろうと思われました。
大清水の名水グルメを堪能

しばらく待ったところで運ばれてきたそばツユや薬味など。
所変われば…で、老舗が提供するそば猪口が大きくて独特な形をしていたのが少々ビックリでしたけど。
店内貸し切り状態の時だったので、席に座って10分ほど待ったところで我が家の料理が運ばれてきました。

天せいろそば(1,550円)

江戸時代から受け継がれている看板の品は、店の隣に湧く「大清水」仕込みの二八そば。
打つ、茹でる、冷やしてしめるという行程において使われる水は、全て名水「大清水」というこだわり様。そして、あまり水気を切らずに盛り付けられるのも、まろやかな名水あっての成せる技だと思います。
使われているそば粉は国産だそうで、新そばもあって香りが良く、しっかりとしたコシと適度なざらつきを持つ食べ応えあるそばでした。道の駅あつみに売られていた干しそば「大清水そば」の原材料を見ると、そば粉と小麦粉、山いも粉末が主原料と書かれているので、生そばのコシは山芋つなぎ由来のものだったかも知れません。

ツユは甘さ控えめで、醤油の風味と鰹節や昆布の旨味がそばの味を引き立てます。
醤油や味醂のバランスが食べ慣れた越後のそばツユとも良く似た感じで、いつもしているようにそばをツユにどっぷりとつけてから口に運ぶと、噛むほどにそばの甘みが増して美味しかったです。

天ぷらには地元の野菜が使われているそうです。この日はエビ、カボチャ、ピーマン、ナス、シメジの五品。
野菜も美味しかったですが、エビがとにかく大きくて食べ応えありました。

〆のそば湯はサラッとしたタイプ。新そば時期は良いですね。そば湯を飲んでもふんわりとそばの香りがたのしめます。
温海かぶら漬けは冬季限定の味

かぶらづけ(200円)
メニュー表にはなく、店内の壁や柱に貼ってあった「かぶらづけ」は冬季限定の温海の味。伝統野菜である「温海かぶ」を甘酢に漬けた、庄内が誇る伝統的な漬物だそうです。
最初、かぶの梅酢漬けなのかと思って食べていましたが、梅酢ほど酸っぱくないマイルドな酸味で食べやすかったのです。温海かぶは赤かぶなので、かぶ本来の赤い色素が甘酢によって発色しているんですね。
ほんのりとしたかぶの苦みもまた美味しい、新しい地元野菜との出会いとなりました。
ご馳走様でした。

大清水
- 住所:山形県鶴岡市湯温海乙131 ※Google Map
- 備考:文政年間創業
おしまいに
道の駅は地元情報発信の有難い場。たまたまトイレ休憩で立ち寄った道の駅あつみのお陰で新たな名水に出会え、美味しい名水グルメを堪能することができました。
庄内地方には「麦切り」という郷土食が存在しますが、そばに関しても美味しい店がたくさんあるというのも今回の発見になりました。特に、良質な水は食材の持ち味を存分に引き出してくれますから、新そばの時期に、ずっと変わらぬ製法で提供する老舗の味は格別でした。
お腹も膨れたところで、滞在時間わずか1時間で山形の温海から新潟の山北へと戻り、夕方の大川のコド漁をたのしみました。
Saturday, November 19, 2022|ドーン太 生後2,826日
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