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越後大川の伝統鮭漁【コド漁】見学2022|村上市山北

2022年11月29日

お出掛け
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伝統 7歳8ヶ月

鮭漁は新潟県北部に位置する村上市の秋の風物詩であり、毎年時期になると三面川をはじめ、大川や勝木川には多くの鮭が遡上してきます。

先の記事では、村上市内を流れる三面川の伝統漁法である「居繰網漁」と「ウライ漁」をご紹介しました。
この度は、村上市の中でも最も県北に位置する山北さんぽく地区(旧山北町)を流れる大川に伝わる、とても珍しい「コド漁」の様子をご紹介しようと思います。

三面川の伝統漁法【居繰網漁】今夏の豪雨被害にも負けずに実施中|村上市

三面川の伝統漁法【居繰網漁】今夏の豪雨被害にも負けずに実施中|村上市

今年も県北の城下町・村上の三面川で「居繰網漁(いぐりあみりょう)」と呼ばれる伝統的な鮭漁がはじまったと知り、お天気下り坂だった休日の午後に見学に行ってきました...

大川だけでしか見ることのできなくなった江戸時代から伝わる「コド漁」

村上市山北地区は新潟県の最北端にあり、すぐお隣は山形県鶴岡市(旧温海町)です。県下有数の海岸景勝地「笹川流れ」に代表される風光明媚な日本海を有しながら、地域の9割ほどが森林という立地で、その山々の合間を縫うように流れる中小の河川流域に集落が形成されています。

山北地区を流れる大川では毎年、晩秋になるとたくさんの鮭が産卵場所を求めて遡上します。川原は鮭を待ち望んだ漁師さんたちで賑わい、川の至るところで「コド」と呼ばれる仕掛けが見られるようになります。

新潟県山北地区の大川で行われているコド漁の様子

コド漁は川底に杭を打ち、竹や柳などで人工的に隠れやすい居場所(コド)を作って遡上してきた鮭を誘い込みます。漁が盛りの時にはコド小屋に泊まり込み、夜明けにコドの天面に取り付けた小窓から覗きながら、差し込んだ鉤に鮭をひっかけて捕獲するという漁法です。鮭の習性を上手く利用し先人の知恵が活かされたコド漁は、江戸時代から行われていたと伝わります。

現代の鮭漁というと川に柵(三面川ではウライ)などを設けて遡上を止め、そこに網を打っての漁法が一般的なのではないかと思いますが、その中にあってもコド漁のスタイルは珍しく、今では大川でしか見られない伝統的な鮭漁法になります。

大川に仕掛けられたコドの様子

画像をクリックorタップでモッカリの名称を確認できます

現在の大川のコド漁は簡略化されていて、伝統的なコドをシンプルにした「モッカリ」と呼ばれるコドⅡ型が殆どのようです。▲上記画像をクリックすると三年前に撮影したモッカリの名称入り画像がポップアップしますが、その頃と比べても今回はさらに簡略化が進んだ気がしました。

ちなみにモッカリとは「腹が立つ」という意味で、伝統的なコドに比べて簡素なコドⅡ型は鮭をとり逃すことが多いからそう呼ばれるそうです。

清らかな大川の流れ

大川の水は澄んで清らか。川の中をジッと見ていると、遡上してきた鮭の姿が時々見え隠れしていました。

大川河口の様子

コド漁が行われているのは大川の河口200~300m付近から上流にかけて。写真奥に見える砂山のすぐ向こうはもう日本海です。

タネイオによる鮭のオトリ漁

鮭は淵などの深いところで休みながら遡上流路を通って産卵床へ遡ってくると考えられています。

大川では鮭の産卵床を「ホリ」や「ホリッパ」と呼び、遡上した鮭が多く集まるので良い漁場とされています。しかし遡上の初期は鮭の個体数も少なく、産卵期にも達していないためにホリでの漁は困難なため、川の状態に合わせて複数の漁法を展開しています。

イオミチ(遡上流路)ではコドやモッカリを川の中に設け、そこに寄ってきた鮭を鈎で捕る漁法が行われてきました。ホリにおける漁法は、現在ではオトリを用いるものが一般的です。

大川橋の上から眺める大川のコド漁の様子

ホリには人影が川面にうつらないように遮蔽する木の垣「カザミ」という装置を設けた大きな見張り台がいくつもでき、口からエラに4~5mのタネイトを通したタネイオ(オトリの鮭)が竹竿に繫がれて川の中に流されます。オスが多く遡上する漁の初期にはメスをタネイオとし、逆にメスが多く遡上する漁の最盛期にはオスがタネイオとなります。

このタネイオに近づいてきた鮭を鈎や網で捕獲するのがオトリ漁です。

足場台もそれぞれ

見張り台も少し個性が出る

大川でコド漁をする漁師

大川で鮭を待つ漁師

コド漁をする漁師が手にしていたカギ針のアップ

漁師が手にする20㎝ほどの鈎が付いた竿

河川敷に置かれていたタネイオらしき鮭

河川敷に置かれていたタネイオらしき鮭(生きています)

タネイオはコドで捕れた鮭を利用したり、他の漁師が捕った鮭を譲り受けたりして入手します。

橋の上から大川をのぞき込むドーン太

ん!?
釣れたのかな?

水から引き上げられるタネイオ

…と私も思いましたが、こちらの漁師さんにアクシデント発生!

絡み付いた二本の糸

仕掛けておいた二匹のタネイオ同士の糸が絡まってしまい、身動きのとれなくなった一匹が使い物にならなくなっていたのです。

見張り台の上から大川を見下ろす漁師

ところが…

大物を釣り上げた漁師

ほんの数分、上流側の様子を見ながら歩いているうちに、先ほどの漁師さんが大物を釣り上げていてビックリでした。

気になったこととまとめ

今年8月の豪雨の際、山北地区においても浸水被害があったそうです。
幸い大川には大きな被害は無かったようですが、この日見た漁の様子から、三年前の大川とは少し違うように感じられました。それが夏の大雨によるものかは分かりませんが、河道が少し変わって、河口部左岸側に鮭漁の仕掛けが一つも無かったのです。

三年前に見学した日は大川の両岸に見張り台が設けられ、圧巻の景色が広がっていたものでしたが。

越後大川でしか行われない伝統鮭漁【コド漁】を見学してきました|村上市

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新潟の県北・村上市の鮭漁は秋の風物詩。毎年秋になると三面川(みおもてがわ)をはじめ、大川や勝木川には多くの鮭が遡上してきます...

羽越本線を走る列車

かなり陽も傾き、上着も無しに見学していたので少し肌寒さを感じた頃、漁場のすぐ脇を走る羽越本線を列車が通過して行きました。

オトリ漁をバックに大川橋の上にいるドーン太

大川のコド漁が見られるのは毎年10月から12月末頃まで
期間中は自由に見学できるよ!

おまけ

夕陽の日本海と粟島

コド漁の見学を終え、帰路に着く際に見た日本海と夕陽と粟島の風景。

いつも見慣れた日本海は目の前に佐渡が横たう風景ですが、県北まで来ると目の前は粟島!
小さな島ですが、お天気が良いと手に取るようにクッキリと見えて綺麗です。

粟島と夕陽

Saturday, November 19, 2022|ドーン太 生後2,826日

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そふぃあ
Posted by そふぃあ
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コメント(16)

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徳川たぬこ  

2022/11/29 (Tue) 09:11

おはようございます🐟

詳しい説明つきで初めて拝見する鮭漁を臨場感たっぷりで堪能できました
アクシデントを物ともせず大物を釣り上げるとは˖✧プロですね
ドーン太くんのお陰で見学の位置からの距離間がわかりやすかったです

そふぃあ  

2022/11/29 (Tue) 10:23
そふぃあ

To 徳川たぬこさん

こんにちは。
こちらにもコメントありがとうございます。

三面川の居繰網漁、山北のコド漁と、村上には昔ながらの鮭漁が残っていて、県民としても誇らしい限りです。
次の世代で継承してくれるような人があるともっと良いのですけどね。

古典的な漁ですが、目の前で魚が揚がると見ている方も興奮します(特にドーン太が笑)
今年は夏に水害があったので、鮭が豊漁であって欲しいと思いました。

もふもふミッフィー  

2022/11/29 (Tue) 18:15

色んな漁法があるんですね~
昔ながらの漁法は、多分、効率的にはあまり良くないのかもしれないけど、その分漁師さんの腕の見せ所も多いんでしょうね(*´∇`*)

大きな鮭が掛かって、ドーン太くんも大興奮したんじゃないでしょうか( ´艸`)

私は魚が苦手なんですが、鮭は私も食べれる貴重な魚なので、資源としてもなくならないで欲しいです。

よつば  

2022/11/29 (Tue) 18:20

良い眺め♡

そふぃあさん こんばんは

海と夕陽、良い眺めですね~♪
ホントホントたぬこちゃんの仰る通り「ん⁉釣れたのかな?」のドーン太くんの1枚で良く解る!
江戸時代から伝わる「コド漁」なんですね~
実際に見てるような良いアングルの写真がいっぱい♡流石!そふぃあさんですね~❣

さえき奎(けい)  

2022/11/29 (Tue) 23:23

コド漁のこともそうですが、鮭にもオトリ漁があるということに驚きました。
そして河口から近いにもかかわらず大川の水の清冽なこと・・・。
素晴らしいレポートでした。

おまけの2枚のカットがまた素晴らしいです。
視界が広いということは、写真の正義です(笑)。
私も、最近すっかりご無沙汰になってしまったフィールド撮影に行きたいという気分になりました。

そふぃあ  

2022/11/30 (Wed) 08:43
そふぃあ

To もふもふミッフィーさん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

仰るように、一網打尽にするよりも効率の悪い漁法だと思いますが、鮭と一対一の感覚もあって、そこがまた受け継がれてきた理由の一つなのかも知れません。
腕の立つ漁師さんになると鈎を下から上に持ち上げるようにして、川底の鮭を感じながら引っかけたようです。
今はそこまで繊細な漁をする人もなく、後継者が育ってくれることを願うばかりです。

魚が掛かると、ドーン太も興奮して見ていますよ。
こちらはお年取りの魚がブリと鮭なので、これから年末年始にかけては貴重な鮭の存在です。

そふぃあ  

2022/11/30 (Wed) 08:46
そふぃあ

To よつばさん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

ほんの少し日本海から川に入ったところで鮭漁が行われています。
川の中では戦いでしたが、穏やかな日本海と夕陽の光景は綺麗で癒されました。

江戸時代から伝わる漁が、山間の小さな町で受け継がれています。
それが県内であること、実際に見に行けるということが嬉しいです。
後継者の問題もあるでしょうが、長く続いて欲しいと思いました。

そふぃあ  

2022/11/30 (Wed) 08:51
そふぃあ

To さえき奎さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

アユの友釣りは一般的ですけど、産卵期の鮭にもこれが成り立つわけですね。
SNSなんて無い時代の昔の人たちが、身を持って学んだからの知恵が詰まった漁法だと思います。
ちょっと時間帯が悪くて豊漁とはなりませんでしたが、目の前で魚が揚がったのを見るのはたのしいですね。

この日は水平線に大きな雲があって、日本海に沈む夕陽にはなりませんでしたが、雲が表情を作って綺麗な夕景でした。
確かに、視野が抜群に開けているので、さえきさんならもっと違ったカットが撮れたことでしょう。

オグリン♪  

2022/11/30 (Wed) 15:08

素晴らしい。

まるでドキュメンタリー映画を観ているようであります。

実は私は話だけで見たことがなかったのであります(笑)。
誠にありがとうございました。

県北をご紹介して頂き感謝いたします。

電車に夕日。
素晴らしいカット。

名監督ですね。

やぴこ  

2022/11/30 (Wed) 15:43

勉強になりました

そふぃあさん、こんにちは

聞きなれない、見慣れない言葉が沢山でてきて何度も読み返しております(;'∀')
漁と一言では言えても、実にたくさんの方法があるのですね。

その土地(川?)や生息する生物に合わせて、いろいろと工夫されているのでしょうね。
釣り自体をほぼしたことが無いのですが、とても感心してしまいました。

すごい!
大物が釣れて私も興奮してしまいました笑

少し波の立つこの海を見ていると北の方の海だな~と思えてきますね。
夕陽がとっても綺麗✧*

マクノスケ  

2022/11/30 (Wed) 17:10

いつもながら詳しい説明で見させて頂きました!
鮭をこうやって採る方法もあるんですね。
それをちゃんと写真に収めて丁寧な解説、本当に感心してしまいます。
ドーン太くんも楽しんで満足そうな顔してますね!良かった!良かったー!

そふぃあ  

2022/12/01 (Thu) 08:50
そふぃあ

To オグリン♪さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

三面川の鮭漁のように派手さは無いですが、同じように昔ながらの伝統を感じる鮭漁は見ていてたのしいです。
意外と新しいもの好きに感じる新潟に、こんなにも昔ながらの漁法が残っているのも嬉しいことだと思います。
人情のまち・村上だからなのかも知れません。

こちらこそ、貴重な風景を見せていただきありがとうございます。

そふぃあ  

2022/12/01 (Thu) 08:56
そふぃあ

To やぴこさん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

日本で唯一になってしまった鮭の漁が、県内にあることが誇らしいです。
川上から一網打尽にしたら、もっとたくさんの鮭が一度に捕れるでしょうに、一対一で鮭と向き合う漁に、ちょっとしたロマンを感じます。

日暮れ近い時刻のアクシデントだったので、この日は鮭が捕れる図は諦めていた私です。
そんな時に大物が揚がってくれて、そんな時は見ている方も興奮しますね。

この日はお天気も良くて、海岸線を日本海を眺めながら「穏やかだな~」って思いました。
これから冬本番になると、白波が打ち付ける風景が常になります。
あまり寒いと、波打ち際が凍って波の花が咲くんですよ。

そふぃあ  

2022/12/01 (Thu) 09:00
そふぃあ

To マクノスケさん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

昔ながらの鮭漁が、今も県内で行われていることが嬉しいです。
後継者問題を考えると、あと何年この風景が見られるのかな?と思ったりもしますが。
私も知らないことだらけなので、自分の勉強のためのメモのような記事です。

魚があがると抵抗して動くので、それでやっとドーン太が気付いて「何、何」ってなります。(笑)
それまでは、ただの川原散歩だと思っているドーン太です。

うしかい座  

2022/12/01 (Thu) 19:27

こんばんは。

この漁法も独特ですね。
おとりを使うのですか。
大きな鮭が、結構な数遡上するところだからできる漁でしょうか。

サケ漁とは関係ないですが、羽越本線のこの橋梁、すっきり撮れて良い場所だと思います。
夕陽と印象的なタイミングで撮れましたね。

そふぃあ  

2022/12/02 (Fri) 08:54
そふぃあ

To うしかい座さん

こんにちは。
コメントありがとうございます。

鮭にもオトリ漁があるんです。
産卵のため、お互いに寄り添う習性を利用した独特な漁だと思います。
遡上してきたところを一網打尽にする漁法ではなく、鮭と漁師が一対一の真剣勝負なところも見所だと思います。

漁師さんたちも上がりに近い時間で、夕陽が綺麗に見えていたので露出を調整したところに列車がやってきました。
なので、列車を撮るには明るさが足りなくて…(汗)
何となく…の、雰囲気だけの中途半端な列車写真でお恥ずかしい限りです。