越後大川の伝統鮭漁【コド漁】見学2022|村上市山北
鮭漁は新潟県北部に位置する村上市の秋の風物詩であり、毎年時期になると三面川をはじめ、大川や勝木川には多くの鮭が遡上してきます。
先の記事では、村上市内を流れる三面川の伝統漁法である「居繰網漁」と「ウライ漁」をご紹介しました。
この度は、村上市の中でも最も県北に位置する

三面川の伝統漁法【居繰網漁】今夏の豪雨被害にも負けずに実施中|村上市
今年も県北の城下町・村上の三面川で「居繰網漁(いぐりあみりょう)」と呼ばれる伝統的な鮭漁がはじまったと知り、お天気下り坂だった休日の午後に見学に行ってきました...
大川だけでしか見ることのできなくなった江戸時代から伝わる「コド漁」
村上市山北地区は新潟県の最北端にあり、すぐお隣は山形県鶴岡市(旧温海町)です。県下有数の海岸景勝地「笹川流れ」に代表される風光明媚な日本海を有しながら、地域の9割ほどが森林という立地で、その山々の合間を縫うように流れる中小の河川流域に集落が形成されています。
山北地区を流れる大川では毎年、晩秋になるとたくさんの鮭が産卵場所を求めて遡上します。川原は鮭を待ち望んだ漁師さんたちで賑わい、川の至るところで「コド」と呼ばれる仕掛けが見られるようになります。

コド漁は川底に杭を打ち、竹や柳などで人工的に隠れやすい居場所(コド)を作って遡上してきた鮭を誘い込みます。漁が盛りの時にはコド小屋に泊まり込み、夜明けにコドの天面に取り付けた小窓から覗きながら、差し込んだ鉤に鮭をひっかけて捕獲するという漁法です。鮭の習性を上手く利用し先人の知恵が活かされたコド漁は、江戸時代から行われていたと伝わります。
現代の鮭漁というと川に柵(三面川ではウライ)などを設けて遡上を止め、そこに網を打っての漁法が一般的なのではないかと思いますが、その中にあってもコド漁のスタイルは珍しく、今では大川でしか見られない伝統的な鮭漁法になります。
現在の大川のコド漁は簡略化されていて、伝統的なコドをシンプルにした「モッカリ」と呼ばれるコドⅡ型が殆どのようです。▲上記画像をクリックすると三年前に撮影したモッカリの名称入り画像がポップアップしますが、その頃と比べても今回はさらに簡略化が進んだ気がしました。
ちなみにモッカリとは「腹が立つ」という意味で、伝統的なコドに比べて簡素なコドⅡ型は鮭をとり逃すことが多いからそう呼ばれるそうです。

大川の水は澄んで清らか。川の中をジッと見ていると、遡上してきた鮭の姿が時々見え隠れしていました。

コド漁が行われているのは大川の河口200~300m付近から上流にかけて。写真奥に見える砂山のすぐ向こうはもう日本海です。
タネイオによる鮭のオトリ漁
鮭は淵などの深いところで休みながら遡上流路を通って産卵床へ遡ってくると考えられています。
大川では鮭の産卵床を「ホリ」や「ホリッパ」と呼び、遡上した鮭が多く集まるので良い漁場とされています。しかし遡上の初期は鮭の個体数も少なく、産卵期にも達していないためにホリでの漁は困難なため、川の状態に合わせて複数の漁法を展開しています。
イオミチ(遡上流路)ではコドやモッカリを川の中に設け、そこに寄ってきた鮭を鈎で捕る漁法が行われてきました。ホリにおける漁法は、現在ではオトリを用いるものが一般的です。

ホリには人影が川面にうつらないように遮蔽する木の垣「カザミ」という装置を設けた大きな見張り台がいくつもでき、口からエラに4~5mのタネイトを通したタネイオ(オトリの鮭)が竹竿に繫がれて川の中に流されます。オスが多く遡上する漁の初期にはメスをタネイオとし、逆にメスが多く遡上する漁の最盛期にはオスがタネイオとなります。
このタネイオに近づいてきた鮭を鈎や網で捕獲するのがオトリ漁です。

見張り台も少し個性が出る

大川で鮭を待つ漁師

漁師が手にする20㎝ほどの鈎が付いた竿

河川敷に置かれていたタネイオらしき鮭(生きています)
タネイオはコドで捕れた鮭を利用したり、他の漁師が捕った鮭を譲り受けたりして入手します。

ん!?
釣れたのかな?

…と私も思いましたが、こちらの漁師さんにアクシデント発生!

仕掛けておいた二匹のタネイオ同士の糸が絡まってしまい、身動きのとれなくなった一匹が使い物にならなくなっていたのです。

ところが…

ほんの数分、上流側の様子を見ながら歩いているうちに、先ほどの漁師さんが大物を釣り上げていてビックリでした。
気になったこととまとめ
今年8月の豪雨の際、山北地区においても浸水被害があったそうです。
幸い大川には大きな被害は無かったようですが、この日見た漁の様子から、三年前の大川とは少し違うように感じられました。それが夏の大雨によるものかは分かりませんが、河道が少し変わって、河口部左岸側に鮭漁の仕掛けが一つも無かったのです。
三年前に見学した日は大川の両岸に見張り台が設けられ、圧巻の景色が広がっていたものでしたが。

越後大川でしか行われない伝統鮭漁【コド漁】を見学してきました|村上市
新潟の県北・村上市の鮭漁は秋の風物詩。毎年秋になると三面川(みおもてがわ)をはじめ、大川や勝木川には多くの鮭が遡上してきます...

かなり陽も傾き、上着も無しに見学していたので少し肌寒さを感じた頃、漁場のすぐ脇を走る羽越本線を列車が通過して行きました。

大川のコド漁が見られるのは毎年10月から12月末頃まで
期間中は自由に見学できるよ!
おまけ

コド漁の見学を終え、帰路に着く際に見た日本海と夕陽と粟島の風景。
いつも見慣れた日本海は目の前に佐渡が横たう風景ですが、県北まで来ると目の前は粟島!
小さな島ですが、お天気が良いと手に取るようにクッキリと見えて綺麗です。

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