120年に一度の奇跡?越後七不思議の「逆ダケ」が花盛り|新潟市
親鸞聖人の越後七不思議の一つとしても知られる、新潟市中央区にある国の天然記念物「鳥屋野逆ダケの藪」で珍しい竹の花が咲いているとの情報を受け、真夏日で朝からガンガン太陽が照り付けていた日の午前中に見学に行ってみました。
実は、今回の記事を入れた「親鸞聖人と越後七不思議」というカテゴリが当ブログには設けられていますとおり、今から十年ほど前に親鸞聖人の越後七不思議を巡る旅をしており、鳥屋野逆ダケの藪を訪れるのも今回が初めてでは無いのです。

その当時は東門近くの空き地に車を停めて見学できたと記憶していますが、現在は周辺にびっしりと住宅が建ち並んで様子が一変しており、逆ダケを見学する人のための駐車場が旧鳥屋野小学校跡地に設けられていました。
指定駐車場から東門まで徒歩5分、西門までは徒歩3分。そこに行き着くまでがもう暑くて暑くてたまらなかった日の訪問記です。
国指定天然記念物「鳥屋野逆ダケの藪」

鳥屋野逆ダケの藪「東門」
駐車場から徒歩5分でやって来たのは、鳥屋野逆ダケの藪の東門です。ご覧のように立派な佇まいで、こちらが正門と言って間違いない場所だと思います。
場所が場所ですので何となく嫌な予感はしていたのですが、東門を入ってすぐの場所に注意事項が書かれた案内板があり、その中のに“動物(身体障害者補助犬を除く)を持ち込ないこと(犬を連れての散歩もご遠慮ください)”との一文を見つけ、暑い中ドーン太を連れてきたことを後悔しました。
そうですよね、ただの竹藪ではなく「国の天然記念物」ですもんね。
越後七不思議のひとつ「逆ダケ」とは
「鳥屋野逆ダケの藪」の東門や案内板の資料図にもありますよう、こちらの
枝の曲がり方には大きく分けて3種類あります。
- 湾曲型:枝が先のほうで水平より下に垂れ下がるもの
- 鋭角型:枝が最初の節で曲がり、枝全体が鋭角に垂れ下がるもの
- キクキク型:枝の根元から鋭角に曲がるか、節と節の間で曲がらず枝の節のところで曲がるのが目立つもの
このうち2番目に登場する鋭角型が本来の逆ダケといえます。竹一本の全ての枝が曲がっているというよりも、一部の枝が曲がっているというのが一般的です。

このように畸態植物を多く有する竹藪は珍しく、内務省から派遣された理学博士・三好学氏の調査が入り、大正11年(1922年)10月12日に全竹林が国の文化財に指定されています。
また、新潟市では平成16年(2004年)度に「保存管理計画」を策定し、平成18年(2006年)度に指定地の大部分を公有地化して整備を進め、平成21年(2009年)度から一般公開をしています。現在は地元自治会による愛護会の協力を得ながら、逆ダケ藪の維持管理が行われています。
この「逆ダケ」については、建永2年(1207年)越後に流罪となった浄土真宗の開祖・親鸞聖人が、一時鳥屋野に滞在し布教していた時に自らの教えが広まらないことを嘆き「我が教義真意なら、この枯竹必ず根を張り芽を出すべし」と手持ちの竹杖を挿したところ、逆さに枝葉が付く竹になって根付き繁茂したといわれるのが、古くから「越後の七不思議」「親鸞の七不思議」の一つとして知られてきたものです。
ブログカードはお旧跡巡りをした2011年の記事ですが、もう少し詳しく書かれていますので、よろしければご参考まで。

逆ダケ|西方寺旧跡
西方寺旧跡鳥屋野にある西方寺旧跡です。承元元年(1207年)親鸞聖人35歳の時、念仏弾圧によって越後に流罪となりました。居多ヶ浜に上陸した親鸞聖人は...
越後七不思議にさらなる不思議!逆ダケに花咲いた

鳥屋野逆ダケの藪「西門」
先の東門周辺は逆ダケはあっても花の付いた竹は見つけられなかったので、「竹藪の西側の一部の開花が進んでいます」の情報どおり、竹藪の周囲をグルリと半周するかたちで西門の方へと向かってみました。

西門脇には吊り鐘池跡があり、そこで記念撮影するドーン太の背後に見えるのが西側の竹藪入り口です。
残念ながらここから先は、四つ足毛皮族のモデルさんは入れませんけど…。

西側竹藪入り口の様子
竹藪の入口の向かって右側の竹が、淡い枯れ色になっているのがお分かりになるでしょうか。
遠くからでは竹が枯れかかっているのかと思って気がつきませんでしたが、近くで見ると、これが開花中という竹の花の集まりでした。

「花」というのだからもう少しカラフルだったり、ふんわりとした花びらのようなものがあるのかと思いきや、
鳥屋野逆ダケの藪で初めて開花が確認されたのは令和元年(2019年)5月のこと。この時に開花していたのは9本で、そこから年々範囲が広がり、今年は400本余が開花しているとの情報でした。
そして竹の開花は、100年から120年に一度ともいわれる大変に珍しい現象です。

これは吉兆か?それとも不吉な予兆か?

東門側では見つけることのできなかった竹の花。開花が進んでいるという西門側でも一旦竹藪の中に入ってしまうと開花を探すのも難しいほどで、西門竹藪の外周側一帯にのみ開花が確認できるようでした。
実はまだ謎だらけの竹の開花

先ほど「竹の開花は100年から120年に一度」と申し上げましたが、100年以上前の実態を実際に目にして研究などされていないため、竹の開花についてのメカニズムが解明されておらず、「滅多に起こらないことが起こっている」という意味合いで100年単位の数字が使われている部分もあるようです。
時として部分的に開花することはあるようですが、一斉に開花する原因についてはいまだ未解明で、切られる、環境変化などでストレスを感じているなどの影響によって開花がはじまるのではないかという説もあるようです。
竹の種類によっても違うようですが、開花後は地上部が全て枯れてしまうという話もあり、一斉開花は寿命の合図であり、新しい命へのサイクルのはじまりであるともいえるようです。
病気がストレスになっている可能性も?

これは▲一斉開花が見られた西門側の竹藪外周で見つけた、球状になった笹の塊です。
竹の先にぶら下がるように幾つも見られたので可愛いなと思って撮影したのですが、あとで調べてみると、どうも「てんぐ巣病」と呼ばれるものではないかと思われるものでした。
「てんぐ巣病」とは、カビの一種が原因で発生する伝染病のこと。数年前から西日本側でも「てんぐ巣病」によって竹林が枯れる、開花が見られるという現象がネット上でも報じられているのを目にしています。
一斉開花のすぐ脇で見つけた「てんぐ巣病」らしき球体の笹だったので、鳥屋野逆ダケの藪でも同じことが起こっているのでないと良いな…と思ってしまいました。
その他・逆ダケの藪で出会った光景
ドーン太と一緒に写るのは、東門すぐ脇にある「順徳上皇 御馬繋の榎」の石碑です。
承久3年(1221年)承久の乱の失敗によって佐渡に配流となった順徳上皇が佐渡へ向かう途中、親鸞聖人の遺徳を偲んでこの地を訪ねられたと伝わります。
おしまいに
実は今回の記事をまとめようとしていたこのタイミングで、今朝の地方紙に「新潟市北区の民家庭に10年前に植えたクロチクに花が咲いた」という話題が掲載されており、「そうだとしたら(花が咲く=枯れて無くなる)少しさみしい」と家の方の複雑な心境のコメントが添えられていました。
いまだ謎の多い竹の花。けれど各地でその目撃情報が多くなっているということは、竹の世界にも何か特別な変化が起こっているのかも知れません。
私も機会をみつつ、鳥屋野逆ダケの藪に咲いた花の後を見守ってみたいと思います。

Sunday, July 3, 2022|ドーン太 生後2,687日