移転リニューアルから1年が経った十日町市博物館で町の歴史に触れてきました
十日町市にある手打ちラーメン万太郎さんで土器模様の丼に入ったご当地色豊かなタンタンメンをいただいたあとは、本物の火焔型土器を見たくなって、再訪となる十日町市博物館へと向かいました。
実は、前回の訪問は旧館時代末期のこと。お隣に新館が建設中なのを横目に見ながらの初訪問でしたが、今回はその時に建設していた新館での見学になります。
まだ真新しさの残る新館で、さらに見やすくなった十日町の歴史展示をたのしんできました。
昨年リニューアルした十日町市博物館

十日町市博物館は、同市の多様で豊かな自然と歴史・文化について学ぶ場として、「雪と織物と信濃川」をテーマに1979年(昭和54年)4月に開館しました。2020年(令和2年)6月には隣接地に新築移転オープンとなり、国宝・火焔型土器のほか、国指定重要民俗文化財「越後縮の紡織用具」、「十日町の積雪期用具」などが収蔵・展示されています。
博物館の正面外壁は火焔型土器の文様を表現したデザインになっています。建物全体は雪国ならではの雁木と大河・信濃川の流れをイメージした通路を配し、雪の結晶模様の織物をイメージした曲線を描いた庇で建物の正面を包み込んでいます。
撮影OKになった常設展示

体温測定と手の消毒を終えて入館すると、常設展示室の入口に▲このような案内がありました。
旧館時代も常設展示室は撮影可能ではありましたが、「個人の利用に限り…」のような添え書きがあったと記憶しています。新館になって「三脚、フラッシュ禁止」とはあるものの、さらに展示物の撮影に対しての自由度が上がったように感じました。
※なお、常設展示の中には触ってたのしめるものも多々ありますが、コロナ禍にあって1人に1組ずつの使い捨て手袋が手渡され、それを着けての利用が求められました。
常設展示

十日町プロローグ
常設展示は3つのテーマに沿った展示室があります。その3つの部屋へと導く空間が、導入展示室「十日町プロローグ」です。
ここでは各展示室の基本情報をグラフィックスを使って解説し、展示テーマに関する映像が投影されています。
縄文時代と火焔型土器のクニ
十日町市内で出土した遺物を展示し、縄文人の生活のようすを子どもにもわかりやすく解説しています。
国宝展示室

1999年(平成11年)に十日町市の笹山遺跡から出土した深鉢形土器群は、新潟県唯一の国宝に指定されています。国宝・火焔型土器を360度方向から見ることができる展示のほか、博物館所有の土器が展示されています。

笹山遺跡で出土した土器57点が国宝になっています。
およそ5,000年前に作られたとされる火焔型土器。この地域の縄文人が好んで作り、日常の煮炊き用にも使われていたらしいお焦げの跡が残っているそうです。
体験型展示
歴史を理解できない子どもでもたのしいのが、実際に触れて体験できる展示ではないかと思います。
こちらの展示室には組み立てて遊べる国宝・火焔土器のパズルがあったり、国宝や重要文化財の実物とほぼ同じ大きさ、同じ重さの高精細レプリカがあり、持ち上げて重さを実感したり、触れて質感を確かめられる展示がありました。

火焔型土器立体パズル

国宝・火焔型土器の高精細レプリカ

重文・遮光器土偶の高精細レプリカ
縄文人の暮らしを知る
縄文人の一日
縄文時代中期(5,400~4,400年前)頃の、ムラを造って定住的な生活を営んでいた縄文人の秋と冬の暮らしがわかるジオラマ展示がありました。
秋のシーンでは冬に備えて食料や燃料を蓄える様子、母親と娘が土器作りをしている様子が再現されています。冬のシーンでは狩りで小動物を捕ってきた男性の姿や地面に造られた貯蔵庫の様子、家の中で深鉢に雑炊のような煮込み料理を作る女性の姿が再現されています。
レプリカの隣にはVR技術を使って自分のアバターが作成でき、縄文時代の生活を疑似体験できる展示もありました。

栗ノ木田遺跡 第21号配石墓
1986年(昭和61年)に同市川治地内で調査された栗ノ木田遺跡は、縄文時代後期前半の集団墓地跡です。
配石墓の展示模型は実物大。実際には人骨は出土しておらず、推定復元されたものです。
織物の歴史

絞り染め風の床が見事な2つ目の展示室では、十日町における古代から現代までの織物の歴史を時代を追って紹介しています。重要文化財である越後縮の紡織用具を中心に、壁面ケースには近世の越後縮から現代の着物までを一堂に展示しています。
越後縮の原料でもあるカラムシ

カラムシ(苧麻)
カラムシは、イラクサ科の多年生植物で、別名を「
戦国時代、上杉謙信の軍事的な強さは豊かな経済力に掛かっていたといわれ、その経済力を支えた主なものが米・銀・越後縮に青苧であったそうです。(古来は越後縮と呼ばれていましたが、現在では平織のものは越後上布、縮織のものは小千谷縮と区別され、共に重要無形文化財に指定されています。)
布の原料となる苧麻を加工したものが青苧で、青苧を独占的に取引する商人の同業者組合である青苧座が越後府(上越市)に組織されていたことが分かっているそうです。また、産地付近にある青苧座は越後府以外には知られておらず、その規模の大きさを物語っています。
織機の移り変わり



明治期の織物

風通織(1897年|明治30年頃)
明治時代以降の十日町織物は、原料を青苧から絹(生糸)へ移行させるとともに、工場のよる生産へと姿を変えました。
雪と信濃川

「川と生きる」では舟運や水害、水力発電など、信濃川と人々の関わりを解説、「雪と暮らす」では国指定重要文化財である十日町の積雪期用具を展示すると共に、同市内の移築民家によって雪国特有の文化を紹介しています。
積もった雪の重さ体験コーナー

雪の重さを体験できるコーナーが設けてありました。
ざらめ雪を持ち上げた若い女性が一言「重いっ!」と…。十日町のみなさん、ご苦労様です。
雪国の民家
雪の重さ体験の後ろに見えるのは、およそ200年前に同市中条地内にあった民家を移築したものです。移築展示されているのは生活の中心部だけですが、本来は中門造りという、北陸地方から東北地方の日本海沿岸地域にみられる民家の建築形式であったようです。
当初の民家は家族がひとつの部屋に雑居する単室型でしたが、その後必要に応じて間仕切りをしたり、厩や物置などが別棟に建てられるようになります。しかし豪雪地帯のために母屋から離してそれらを造ることは避け、ひとつの建物に全てを取り込むようにしました。これがこの地方に多く見られる中門造りの住宅です。

ニワ
ニワと呼ばれる土間は、仕事場や炊事場として使われました。炉の上にある火棚では濡れたものを乾かしたり、保存食である味噌玉が吊るしてあります。
中の間(茶の間)
家族の居間である中の間。普段の客間にもなります。農閑期の手仕事として、越後縮などの織物文化が発達しました。
炬燵で針仕事をする女性、その隣でちぐらに入る赤ちゃんがリアル過ぎて、ずっと監視されているようでした(笑)
座敷
街中の雪掘り

積雪が数メートルにも達する豪雪地帯では、屋根の雪下ろしも冬場の大切な仕事のひとつで、私たちが雪かきと呼ぶ除雪作業も雪深い地域では雪掘りと呼びます。
屋根から下ろした雪を積めるのは自分の家の前だけです。各家ではユキドヨ(雪樋)を使って雪を下ろし、次に雪が降った時のことも考えて、できるだけ路面から垂直に積んで面積を確保します。人々は雁木の下を通行していました。
節季市

十日町では毎年1月10日から25日までの間、5日おきに節季市が開かれることでも有名です。しん粉細工の縁起物「ちんころ(仔犬を意味する方言)」が人気なので、別名をちんころ市ともいいます。

十日町|節季市
1月10日(日)十日町の節季市(ちんころ市)にて雪が降るところに住んでいるので、真冬のこの時期に、自分のところよりもさらに雪の降る方面に遊びに行くことはありませんでした。しかし...

十日町|クロス10にて♪
『節季市』で無事に「ちんころ」を買うと、そろそろ時刻はお昼になろうという頃でした。せっかく十日町まで来たんだし、やっぱりお昼はお蕎麦食べて帰らないとね!っていうことで...
▲上記ブログカードは、実際に十日町の節季市でちんころを買ったり、まだ小学生だった末っ娘と一緒に親子でちんころ制作体験をした時のものです。もうすでに10年以上も前のYahoo!ブログ時代の記事ですが、よろしければご参考まで。
配布しています

エントランスホールの片隅に、火焔型土器が描かれたマンホールの蓋が展示されていました。
各地でデザインの違うマンホールの蓋はご当地アートであり、コレクションしている人もあると思います。また、丸い形状のマンホールの蓋は落ちない、凹凸があって滑らないことから、近年では合格守りとしても人気ですね。
火焔型土器がデザインされたマンホールカードは、博物館の受付でいただくことができます。
十日町市遺跡広場

十日町博物館が建つ付近は古墳時代(240年代〜)から奈良時代(710〜793年)の馬場上遺跡が存在した辺りで、博物館の第2駐車場付近には遺跡についての理解を深めてほしいという思いから遺跡広場が設けられています。(新館の移転に伴い第2駐車場が整備されたことにより、遺跡広場の規模は旧館時代よりも縮小してしまったと思います。)

古墳時代の竪穴式住居跡

奈良時代の復元竪穴住居

後ろに見える白い建物が以前の博物館だよ
おしまいに
高度な技術を用い、子どもから大人までたのしめるように生まれ変わった十日町博物館。ほんの暇つぶしのつもりで立ち寄った場所でしたが、見せ方が違うと展示物も違った角度で捉えられ、新しい発見もあって有意義な時間となりました。
この日は企画展示が行われておらず常設展示のみでしたので、気になる企画展示が行われる際には、また見学に行ってみたいと思います。
あと、国宝の火焔型土器が発見された笹山遺跡ですね。こちらも以前に出掛けた時は遺跡に冬囲いがされていた時で、資料館も閉鎖中でしたので開館している時期に改めて出掛けてみたい場所です。そして笹山遺跡では年に一度、興味深いお祭りがされるとのこと。こちらも併せて見学してみたいと思いました。
Saturday, September 18, 2021|Dawn太 生後2,400日
十日町市博物館
- 場所:新潟県十日町市西本町一丁目448番地9 ※Google Map