【大久保の清水】新たな新潟県の名水になった三条市下田の名水と北五百川で出会った春の山野草たち|Dawn太と名水Part71
北五百川の棚田に咲くカタクリを楽しんだあとは、棚田の最頂部からさらに500mほど山に入った場所にある、下田地区の名水目指して散策を続けることにします。

北五百川の棚田から大久保の清水へ

北五百川の棚田から目的の大久保の清水までは、徒歩およそ10分ほどの距離。ほとんど起伏の無い平坦な道を進みます。
平成23年(2011年)7月に発生した「新潟・福島豪雨」の際に清水へ至る山肌が崩れ落ち、その後の普及作業の際に重機が入ったことにより、山道はそれ以前より少し拡張さていると思います。
流れる水音、小鳥のさえずりだけが耳に届く林の中の散策路は、この時期ならではの山野草を探しながら歩ける心地よい道です。
キクザキイチゲ

カタクリの隣に見つけた涼し気な色合いの
雪割草やカタクリ同様に「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と呼ばれ、早春に開花し、夏に葉を茂らせるとあとは成長を止め、地中で休眠しながら次の春を待ちつつ過ごす植物です。
カラーバリエーションも豊富なキクザキイチゲですが、実は花だと思って見ている部分は萼片であり、花弁を持たない植物です。
ショウジョウバカマ

この山中でカタクリの次に出会う数が多かったのが、ユリ科のショウジョウバカマでした。漢字の場合「猩々袴」と書きます。
「猩々」とは、大酒飲みで赤い顔をした、中国に由来する架空の猿のような生き物のことをいいます。ショウジョウバカマの花を猩々に見立て、ロゼット状に広がる葉を袴に見立ててこの名があるというのが通説になっています。
この猩々というワード、以前記事にしたポンセチアの時にも登場しており、我が国では度々赤いものの例えに使われていたように思います。
和名を「猩々木」といったポインセチアの場合、苞が真っ赤ですからその意味もよく理解できますが、ショウジョウバカマの場合、何処が赤くてこの名があるのだろうと見るたび疑問に感じ、花のごく一部分とか、花以外の違う部分を猩々に見立てているのでは?とさえ思ってしまいます。
同じ山中に咲くショウジョウバカマであっても、その環境も微妙に違って個体差も出やすいのか、花色も淡いピンクから薄紫、クリーム色、白花と様々あって個性まで感じられました。

足元の土筆

清水に至る道筋の後半からは、脇に水路を見ながら歩きます。この辺り、前回来た際に山歩きのクールダウンで入水したことを、Dawn太は何となく覚えていたようです。

予防注射をしてきたばかりで入水させられないDawn太の足元に、ニョキニョキと土筆が出ているのを発見!やっぱり里山の春はゆっくりだ。
イワガガミ蕾

先ほどまでの水路を左手に歩くようになると、清水の水源まであと数十mといったところ。誰が備えたのか、こんなところに水飲み用カップが用意されておりました。

水辺の斜面には、光沢のある葉がいっぱい。だけど何の葉なのか分からないので、前を行く女性は咲いていたショウジョウバカマだけをカメラに収め、先を急がれたようです。

ショウジョウバカマのすぐ傍にも存在しているのだけど、気付かない時とはそんなもので……。
今はまだ枯れ葉の布団にカクレンボしていますが、この斜面にはもう少しすると、イワカガミがびっしりと咲きます。少し清水に濡れて咲く淡いピンクのイワカガミ、群生している姿は可愛いですよ。

ねぇ、入っていい?
日向の遊歩道は暑かったし、透明な水も綺麗で入りたい気持ちもわかるけど……。注射してきた日だから絶対にダメです!(きっぱり)
はじめて出会ったミヤマカタバミ
林に入ってすぐの場所に、カタバミの特徴であるハート型の可愛い三枚葉が複数見られました。
白い花は
ホクリクネコノメソウ

水源の近くの誰も気づかないような場所に、国内でも一部の地域にしか咲かないユキノシタ科の
まだ緑少ないこの時期に、綺麗な淡い黄色の色彩が群生している様子は印象的ですが、この花も目立っているのは苞であり、その先にある粒状の集まりが花です。

花のあとにできる果実が熟すと縦に細く裂目ができるので、細くなった猫の目に似ていることからネコノメソウの名がついています。
ホクリクの名がついたのは、新潟県から山陰地方など日本海沿岸地域の湿地などにのみ分布するためで、日本海側雪国ならではの植物なのです。
新たに「新潟県の名水」に選定された「大久保の清水(おおくぼのしみず)」

北五百川の棚田から入り、500mほど歩いた林の中にあるのが、平成30年度(2018年09月10日)に新たに「新潟県の名水」に選定された大久保の清水です。
新潟県では昭和60年頃より、地域で親しまれている湧水などを「新潟県の名水」として選定し、水環境の保全を推進しています。
平成18年度には、県の名水の中でも特に優れていると認めた杜々の森湧水(長岡市)・龍ヶ窪の水(津南町)・宇棚の清水(妙高市)・大出口泉水(上越市)・吉祥清水(村上市)の五か所を新潟県の「輝く名水」として認定。さらに平成30年度には新たに、この度の大久保の清水を含んだ五か所を加え、現在68か所が県の名水として選定されています。

標柱の文字も以前からの「しただの湧水『選』」のままなので、県の名水に格上げ(?)された旨がアピールされていても良いのに…と感じてしまいました。

ここを初めて訪ねた10年ほど前は、一本のビニールパイプが湧水を集めるだけの源泉地でした。現在のように水辺までの階段や水受けが整備されたのは、豪雨によって斜面が崩れて復興した2011年夏の「新潟・福島豪雨」以降のことになります。

悠々と流れるのは、日本の棚田100選に選定されている北五百川の棚田の水源にもなっている「大久保の清水」です。山間集落の五百川地区には尾根ごとに湧水があり、大久保という名は旧土地名から付いています。
北五百川の棚田を潤して棚田米を育むほか、各集落の生活用水としても利用されています。
平成30年度「新潟県の名水」選定|北五百川の棚田水源
- 場所:三条市北五百川地内
- データ:水量毎分300L|硬度7|PH7.0

冷たく、無味無臭で柔らかい美味しい水です。山歩きで暑かったので、久しぶりに水飲み隊長の飲みっぷりも良かったです(笑)

私も水辺へ下りて、冷たい大久保の清水で手を洗って振り返ったら……

ヌォッ!ビックリしたぁ~。
別に私、水遊びしたわけじゃないから(笑)

最後まで水遊びが心残りなDawn太を連れ、棚田までの道を戻ります。

春遅い里山の棚田は、ようやくこれから農作業が行われます。少し広めな棚田は機械が入って作業できますが、小さい田はいまだに人力で代掻きなどの作業がされ、とても手間暇の掛かった昔ながらの米作りがされています。
異常気象が度重なる昨今ですが、豊で良質な大久保の清水の力で、今年も美味しい北五百川の棚田米が実りますように。
おしまいに
棚田にあるソメイヨシノはまだ開花前でしたが、麓の駐車場には早咲きの桜が残雪の粟ヶ岳をバックに満開の状態で咲いていて見事でした。
昨年伺った時に整備されているのに気づいた駐車場は上下段で15台分とたっぷり確保され、一緒にトイレも整備されて観光客の受け入れ態勢も万全になりました。今まで以上に、季節によって変わる棚田の風景を存分に楽しめる場所になっています。
次は田植えが終わった頃にでも、またお邪魔してみたいと思います。
Saturday, April 4, 2020|Dawn太 生後1,867日

すでに何度か訪れている大久保の清水の以前の様子などは、下のブログカードよりどうぞ。先頭の2011年記事は動画付きです。

大久保の清水♪
棚田を満喫し、今度はこの棚田に引き込まれている水を求め、私たちはさらに山の中へと入って行きます。入口の「山ヒル注意」の看板からおよそ500m先に、棚田へと引き込まれている清水の源泉があるという話です...

復活!大久保の清水♪|三条
北五百川の棚田をさらに山奥に向って10分程進むと、棚田に引かれていると思われる水“大久保の清水”の源泉に行き着きます。2年前、水害が起こる僅か1ヶ月前、ここを訪れています...

【大久保の清水】三条市|Dawn太と名水Part42
北五百川の棚田から大久保の清水へ全国の棚田百選にも選ばれている「北五百川の棚田」からさらに山の方に入ると、棚田の水源にもなっている湧き水を見ることができます...
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