【新潟市北区郷土博物館】昭和のくらし展を見学してきました
先の、新潟市美術館で開催中の「草間彌生蔵出し展」に行った時のこと、私がショップで草間グッズの誘惑に負けそうになっていた頃、ロビーでのんびりと寛いでいた丼父が、そこに置かれたパンフレットの中に、面白そうな企画展示を行っているところがあるのを見つけていたので、早速、美術館のあとそちらにも足を延ばしてみました。
新潟市北区郷土博物館
お邪魔したのは、新潟市北区嘉山にある「新潟市北区郷土博物館」。
私、22年間新潟市民でしたが、いまだに合併後の新潟市○○区と言われてもピン!と来ない(汗)。その前身が「豊栄市博物館」であると聞いて、やっと位置的にも理解できました。
北区は新潟市の最北部にある行政区で、新潟市域では唯一阿賀野川右岸側にあり、旧豊栄市と旧新潟市の北地区(松浜・濁川・南浜地域)で構成されています。長閑な田園広がる地域から日本海に面する地域まであり、中でも、オオヒシクイやオニバスなどの貴重な動植物が数多く生息する「福島潟」を有する自然豊かな地域です。

新潟市北区郷土博物館は、当時の豊栄町役場の分館を利用し、昭和43年(1968年)秋に「豊栄町博物館」として開館たことに端を発し、昭和56年(1981年)春、現地に新築移転しています。平成17年(2005年)春に行われた平成の大合併によって豊栄市が新潟市に編入されて「新潟市豊栄博物館」と改称されます。また、平成19年(2007年)春、新潟市の政令指定都市移行によって北区が設置されたことに伴い、その後の平成23年(2011年)春に「新潟市北区郷土博物館」に改称されて現在に至ります。
常設展示「阿賀北の大地と人々のくらし」

北区郷土博物館は、市民の方からの寄贈などによる考古・民俗・歴史・美術・工芸・書など、およそ4万点を超す資料を収蔵しています。
常設展示は平成10年(1998年)夏に一度リニューアルされ、さらに平成27年(2015年)5月に再リニューアルされて現在の「阿賀北の大地と人々のくらし」となり、地域のおいたちや歴史・文化などが紹介されています。また、北区葛塚出身の書家で国際芸術文化賞を受賞した弦巻松蔭の作品も常設展示されています。
北区の歴史

北区は遺跡の宝庫でもあり、これまでに117もの遺跡が発見されています。最も古い遺跡は、市内で最も内陸に形成された砂丘上に立地する北区太田の上黒山遺跡と
また、新潟市域では唯一阿賀野川右岸にあることから、江戸時代には新発田藩や水原代官所の支配を受けてきた北区の明治維新について。大正11年(1922年)から昭和5年(1930年)にかけて新潟県北蒲原郡木崎村(現新潟市北区)で起きた小作争議「木崎村小作争議」(木崎村小作争議は、王番田争議、和田村争議と共に新潟県三大争議の一つ)の歴史資料展示。北区で焼かれた越後随一の陶磁器「太丘焼」の展示などがありました。
水と闘い水と暮らした北区の人々
水と闘い、時に水の恵みも受けた北区の昔の暮らしを、農具・漁具・パネル展示、昭和10年(1935年)頃の福島潟の漁労風景を再現したジオラマで紹介していました。

漁具が語る水辺のくらし
日本海や阿賀野川、そして県内最大規模の福島潟。北区の人々は様々な環境のもと、工夫を凝らした漁具を使って水からの恵みを受けてきました。およそ50年ほど前まで福島潟周辺で使われてきた漁具は、市指定有形民族文化財「福島潟民俗資料」として、狩猟具なども含めた450点余りが新潟市北区郷土博物館に保存されています。
多様な生き物の生息地となり、その恵みを人間と分かち合う潟は里潟と呼ばれており、かつての福島潟ではスダテ漁、カブセアミ漁、氷上追い込み漁のザイボリなど、様々な漁法によって漁が行われていました。
なかでも福島潟特有の漁具がカブセアミで、早春の暖かい早朝または夜にテンカラを点けて舟に乗り、直径20~30㎝の網を上方に上げたまま片手で柄を持ち、カガミと呼ばれる水中メガネで潟の中を覗きながら、泥の中に潜むコイやフナの頭に網をかぶせて捕まえるものでした。しかし、昭和30年頃から農薬流入など環境悪化で魚の種類や漁獲量が激減。新井郷川排水機場の完成で、潟の魚は姿を消しました。
現在は水質も改善し、フナをはじめとした魚やモクズガニなどが捕れるそうですが、ありのままの自然と向き合ってきた先人の漁具の数々が、写真パネルなどと共に当時の漁の様子を物語っています。

暮らしを支えたホンリョウブネ
ホンリョウブネは潟の漁労用の舟で、細身で漕ぎやすいのですが僅か1~2人しか乗れません。漁業を営む家では、働き手ごとに舟が必要となりました。ハンリョウブネはホンリョウブネよりも幅広なため、市場へ行く移動手段や運搬用としても使われ2~3人乗ることが可能でした。

農具が語る低湿地のくらし
昭和35年(1960年)頃まで実際に使用されていた人力農具の数々が展示されていました。
北区は標高0m~2mという耕地が大半を占め、毎年のように湛水被害を受けやすい土地柄でした。沼地を田んぼにするまでの苦労、できあがった田んぼも今のような田んぼではなく深田(沼田)だったので、人力での重労働が偲ばれます。
昭和30年代になって農業にも機械化の波が押し寄せると、土地改良と相まって耕運機などの急速な発達により、農家の苦労も軽減されるようになります。

アシブミダッコクキ
明治期に発明されて急速に普及した、作業能率の良い回転式の脱穀機です。

映像展示コーナー
豊栄が生んだ郷土の芸術家、弦巻松蔭の力強く個性的な書も常設されていました。ただし、こちらは著作権などの関係から撮影はNG。
また、展示場入口に「展示資料及び館内等の撮影をご希望の方は、窓口にお申し出ください。」の貼り紙を見つけたので窓口に申し出たところ、快く撮影許可をいただきました。併せてネット上に写真掲載することも申し上げましたところ、こちらも許可をいただきましたこと、ここに書き添えさせていただきます。
常設展拡大企画【昭和のくらし展】「住まい」の道具イロイロ

今まで知らなかった北区の歴史が楽しくて、ついつい常設展に長居してしまいましたが、実はここからが私たちを郷土博物館へと向かわせた本題「企画展」の話になります(笑)
新潟市北区郷土博物館では収蔵資料の数が多いため、常設展示だけでは紹介しきれないところがあり、平成28年(2016年)からは「常設展拡大企画」と題し、およそ50~70年前頃まで北区で実際に使われていた昔の生活道具をテーマを設けて展示・紹介する企画展も行われています。
昨年度までに「食べる」「着る」といった展示がすでに行われており、2020年1月4日より始まっている今回は、「住まい」に関わる昭和の暮らしぶりが伺える企画展です。
火に囲まれた暮らしの道具イロイロ

電化製品が普及していなかった昭和30年代頃までは、家庭内の至るところで火を使って生活していました。そんな暮らしは火事の危険性も高かったので、火を焚く場所には火伏の神「

置きごたつ・火鉢・台十能
火鉢の奥に見える

夜着・行火・湯たんぽ・洗面器
右側にあるのはゆりかごと、子守りをする子どもの写真(昭和30年|1955年撮影)。

茶箪笥の上の真空管ラヂオ
昭和14年(1939年)に製造された、日本ビクター蓄音機株式会社製のAMラジオです。展示されているR-101型は、当時80円で販売されました。
放送でお馴染みのビクター専属歌手の中に、新潟市沼垂出身の小唄勝太郎さん発見!(上段中央、日本髪の女性です)

沼垂市民プロジェクトと沼垂テラス商店街 |水と土の芸術祭2018-PartⅩ
新潟市を舞台に開催されている「水と土の芸術祭2018」10回目となる今回は、清五郎潟で拝見した「市民プロジェクト作品」の、物語の続きを訪ねます...
水回りの道具イロイロ

川や井戸から水を汲み入れ、ワラや薪で風呂を沸かしていた今から70年くらい前の時代、風呂は各家庭に必ずあるものではありませんでしたし、毎日風呂に入るという生活習慣もありませんでした。風呂が無い家は銭湯や親戚の家に借りに行きました。風呂がある家でも手間を省くために数軒で順番に風呂を沸かし、その家にもらい風呂に行くという方法をとっていたそうです。
▲左写真は五右衛門風呂の底部分。右写真は風呂桶の内部を見たところです。

風呂桶
木の板を何枚も繋ぎ合わせ、タガで締めて作られた風呂桶。鉄の扉は焚口、その上の丸い口は、屋外に煙を逃がすための長い煙突が付いていた部分です。持ち運びができるので、夏場には屋外や水汲みに便利な川近くに運んで風呂に入ることもあったそうです。

珍しい銅製の風呂桶

染付古便器
私が子どもの頃、家の便所は当たり前のようにボットンでした。ちょっと田舎に遊びに行くと、便所が家の外にあるお宅もありましたし、大きく開いた穴に両足を乗せる板が渡っただけの便所もあって、子どもの頃の便所というのは(特に夜)恐怖との戦いの場であった気がします。
この度のポスターに採用されていたのは▲この和式便器です。きっとこういう便器があるのは豪商か豪農の館で、来客用と家族用の便所が分かれて何か所かにあるお宅だったのだろうと妄想。なぜ現代には無いのだろう?と思うような、繊細な日本人らしい美意識を感じる便器でした。
申し込み不要・参加費不要の体験コーナーも

昔のおもちゃで遊ぼう
昔のおもちゃで遊べるコーナーや風呂敷で包んでみようという体験コーナーは、開館時間内はいつでも利用できます。
また、地元から講師を招いての体験コーナー「手織り体験」と「葛塚縞手織り機の実演」は、毎月第2・第4土曜に限って開催されており、各日とも14:00から16:00までとなっています。体験学習全て飛び込みでOK!参加費も不要とのこと。
私たちが伺った時、ちょうど一室では手織り体験が行われている真っ最中でしたが、私、機織りは昔取った杵柄なので(笑)
おしまいに
思いがけず、急遽出掛けてみた郷土博物館でしたが、展示の資料数も豊富で、今まであまり知ることのなかった北区の歴史を楽しく学ぶことができました。
真冬のこの時期なので、実は翌日にも美術館巡りなどしています。そこでお邪魔した、長岡の県立近代美術館で行われている企画展「1964年 東京―新潟」が実につまらなかった!「東京1964」と銘打っておきながら、企画展示室には過去の東京五輪関連展示が三分の一程しか無く、残りの展示は案内板も曲がった状態で付いているものが目立ち、やる気の無さに腹立たしささえ感じました。数か月閉館してリニューアル工事などされていたのに、再開館間もなくの時期にこれでは時間の無駄でした。(こんなところで愚痴ってごめんなさい)
こちらは郷土博物館ということもあり、地元の人、特に地元の子どもたちに、郷土の歴史を分かりやすく紹介する展示がされているのだと思います。しかも、これだけの資料を見ても、イベントに参加しても無料という有難さ。少し前の暮らしを楽しむにも、とても良い施設であると感じました。
この度の「昭和のくらし展」のような拡大企画展は数ヶ月ごとに展示が変わるので、また時期をみてお邪魔してみたいと思いました。

昭和のくらし展「住まい」の道具イロイロ
- 日時:2020年1月4日(土)~同年5月17日(日)開催
- 場所:新潟市北区郷土博物館
- 住所:新潟県新潟市北区嘉山3452 ※Google Map
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