【千年鮭 井筒屋】大粒ピッカピカな豪快・極上はらこ丼をいただきました|村上市
鮭のことを、県北・村上地方の方言で「イヨボヤ」といいます。
魚が訛って「イヨ」。また「ボヤ」も魚を意味する方言になるので、イヨボヤは「魚の中の魚」という意味になり、秋になると村上市内の川に遡上してくる鮭は、地元の人たちにとって大切な魚であるということになります。

県北の鮭漁を学んだあとは、村上市内を流れる
かの松尾芭蕉も泊まった旅宿跡「井筒屋」
新潟県の最北部に位置する村上市は、江戸時代には越後村上藩の城下町として栄えたところです。城下は町割がされ、江戸の頃から旅籠を営んでいた井筒屋が店を構える
また、元禄2年(1689年)松尾芭蕉と弟子の曾良が「奥の細道」の途次に二泊した宿久左衛門跡が井筒屋であり、現在ある明治期の建物は平成19年(2007年)7月31日に国の登録有形文化財に指定されています。
母から娘に受け継がれた近年の井筒屋
近年になっての井筒屋は、平成10年(1998年)頃まで、ビジネス客の宿泊施設として営まれていました。しかし、交通網の整備などによって次第に宿泊客が減少して一時廃業。
その後の平成19年(2007年)になり、明治期の文化的な建造物がリノベーションされたのを機に、その経営は娘さんへと引き継がれ、一日一組の宿泊客を受け入れる旅館とカフェとなって経営を再開します。

【閉店】芭蕉の道を行く~井筒屋~|村上
芭蕉の道、逆行旅。大仏のいらしゃった浄念寺から黒塀通り(安善寺通)を抜け、トラヤさんの前を通れば、目の前の通りの僅か向こうに、そのお宿がみえます。芭蕉のお宿「井筒屋」大町の北に続き...
我が家も▲「Tea井筒屋」時代に一度お邪魔したことがありますが、一階フロアが素敵な町屋カフェとなり、先代であるお母さまと、井筒屋を引き継いだお嬢さん(…といっても私よりも先輩世代でしたが)が仲睦まじく営む、アットホームで温かい雰囲気のある良店であったと記憶しています。
次回は是非ランチを…。そう思っていた「Tea井筒屋」は2016年8月いっぱいで閉店となり、その年の暮れには、二階のお宿も長期休業というかたちで営業を終えることとなります。
美味しかったマフィン、もう一度食べたかったな…。

【2017年3月5日】閉店していた頃の井筒屋
2017年に生まれ変わった井筒屋は「千年鮭きっかわ」がプロデュースする村上初の鮭料理専門店
私が平成29年の「村上町屋の人形さま巡り」で井筒屋閉店を知ったその数週間後、ここに新たに店を展開させたのが、村上屈指の老舗、寛永3年(1626年)創業の「千年鮭きっかわ」でした。
千年続く鮭のまちにあって、村上市初の鮭料理専門店である「千年鮭 井筒屋」
平成29年(2017年)3月17日にオープンした「千年鮭 井筒屋」では、一年を通して村上伝統の鮭料理が楽しめるほか、米どころ新潟ならではの厳選コシヒカリを使った土鍋炊きご飯、きっかわ手作りの麹スイーツなどを提供する場となっています。
現在の「千年鮭 井筒屋」の運営の仕方がちょっとユニークで、開店時の午前11時から、次は午後1時半から、午後3時からと、1時間半毎に客が総入れ替えになるかたちで営業されています。店内に置かれたウェイティングボードに利用者人数と、希望するメニューを予め決めて記入し、我が家はこの日1時半からの回の利用となりました。

では、お邪魔します!
※犬は入店できません。
築160年以上という明治期町屋の風情を残す「千年鮭 井筒屋」店内

井筒屋の家紋入りつづら箱

入口入ってすぐ真正面にある囲炉裏の間も、Tea井筒屋時代と同じでホッとする町屋ならではの空間です。
平成19年にリノベーションされた水回り付近、カフェ時代は見えないようになっていたのですが、現在はお勝手場で作業する様子が垣間見えます。

定刻になると、記名順に店内へと案内されます。
「町屋の人形さま巡り」の際に展示がなされた仏間も客席のひとつになっていますが、我が家はそこを通り過ぎて二階へ!

階段あがって見える、三畳ほどの小上がりの小間。

このほか、二階には以前の宿泊用としても使われたであろう六~八畳ほどの和室が二間あり、我が家は床の間付きの一室へと案内されました。

床の間には見覚えのある芭蕉と曾良の紙人形が、今も大切に飾られていました。
歪んだ大正ガラスの障子戸を開けると、先人たちも見たであろう城下町の景色が広がっていて、何ともラッキーな特等席でした。
鮭丸ごと一本の料理がたのしめる⁉
着席時にいただいた、おもてなしの心を感じる「千年鮭 井筒屋」のリーフレット。裏面にはびっしりと、一本の鮭から調理できる料理が紹介されていました。
村上に伝わる鮭料理には百種類ともいわれるバリエーションがあり、「千年鮭 井筒屋」では、心臓・胃袋・肝臓・ほっぺたなどの珍味に加え、はらこ・かぶと煮・中骨煮など、21種類もの鮭料理が一度に楽しめる料理膳の提供が可能です。
- 鮭料理(7品)2,106円~鮭料理(21品)6,372円まで5段階のメニューにて提供
塩引き鮭の七輪炭火焼きも楽しく、十分に満足できる【鮭料理七品】
常時提供メニューの中から旦那が選んだのは、鮭料理膳の中でも一番品数の少ない「鮭料理七品」(2,106円)でした。
しかし、美味しいご飯が二杯に食後の一口甘酒まで付いて、最低ラインのコースでも十分に満足できる構成になっていました。小食さんだと食べ切れないくらいのボリュームかも知れません。

「鮭の酒びたし」と「鮭手まり寿司」
手前にある「鮭の酒びたし」は、塩引鮭を一年かけてゆっくりと自然の風で熟成させ、薄くスライスしたものです。通常、食べる直前に日本酒に浸すので「酒びたし」なわけですが、運転されるお客様もあるので、あえて酒に浸す前の状態で提供されます。発酵した鮭の凝縮した味わいを堪能できます。

次に運ばれてきたのは、先ほどの鮭の酒びたしから取った「皮」と、きっかわご自慢の「塩引鮭」の乗った皿でした。
まずは酒びたしの皮を箸に取り、これを卓上に用意されたミニ七輪の炭火で「おどり焼き」にして楽しむのです。

パリパリな皮が好きな人は七輪の隅に避け、さらに二切れある塩引鮭を中央に乗せて焼きます。鮭は皮目から2分焼き、ひっくり返してさらに2分焼くと食べ頃になります。

塩引鮭の焼待ち中に運ばれてくるお膳。手前は「土鍋炊きご飯」「だし」、中央に「薬味(三つ葉・海苔・お漬物)」、奥には「鮭のかぶと煮」「鮭の焼漬」「はらこの味噌漬」
お米は村上市のお隣・関川村の米作り名人が育てた岩船産コシヒカリを用い、芭蕉ゆかりの伊賀で作られた土鍋でふっくらと炊かれています。

ご飯の味を一口そのまま味わったあとは、焼きあがった塩引鮭で一杯めのご飯を!

頃合いを見て運ばれてくる二杯目のご飯は、土鍋炊きならではのおこげ入り。

二杯目のご飯には二切れ目の塩引鮭をのせ、村上番茶に鰹だし、生揚醤油で作っただしをたっぷりかけ…

薬味をのせて鮭茶漬けに。これも間違いない!
食後に一口甘酒がついて鮭料理七品のコース終了となります。
- 鮭の酒びたし
- 鮭手まり寿司
- 酒びたしの皮おどり焼き
- 鮭の焼漬
- はらこの味噌漬
- 鮭のかぶと煮
- 塩引鮭
- その他(土鍋炊きご飯・だし・薬味・一口甘酒)
村上市民のソウルフード!鮭遡上期ならではの【豪快 極上はらこ丼】もオススメ!
塩引鮭や鮭の酒びたしと並ぶ、鮭料理の代表格が「はらこ丼」
村上では「イクラ」のことを「はらこ」と呼び、毎年、
イクラ大好きな私と末っ娘は、イベント期間限定メニュー(2019.11.1~12.31)と思われる「豪快 極上はらこ丼」(3,565円)を楽しんでみました。

最初に運ばれてくる「鮭かぶと煮」「鮭生ハム手まり寿司」「鮭ひとくち焼漬」
骨のザクザクした食感まで楽しめる、甘辛な味付けのかぶと煮。もっちりとした食感が後引く美味しさな手まり寿司。焼き立ての鮭を特製のかえしに漬けた焼漬は、香ばしさもあって煮つけとは全く違った味わい。三者三様に、全く違った鮭の味が楽しめます。

鮭料理七品ではお茶漬け用として提供された「出汁茶」。はらこ丼のコースでは、お吸い物として提供されます。
三つ葉を浮かべて…。生揚醤油の加減も優しくて、ホッとする味わいの出汁茶でした。

出汁茶をいただいて「ふぅ~っ」と気持ちが落ち着いた頃、ド~ン!と運ばれてくる目の覚めるような「はらこ丼」のお膳。

ご飯の容器がかなり大きめな丼なので、はらこの器が小さく感じますが、はらこ醤油漬けが思う以上にたっぷり入っています。しかも、粒の一つ一つがこれまで見たことも無いくらいに大きいのです。
接客に当たってくださった仲居さん、確か「ひと腹ひと腹ずつ卵の状態を確かめながら選別し、極上と認めたものだけを職人が手でほぐし、かえし醤油に一晩漬けて作った最上級Sランクのはらこです。」のように説明してくださったはず。
きっかわさんのサイトでは「はらこ」を5ランク分けしているとあり、お店で極上といわれるはらこ醤油漬はAランクであると紹介されています。Sランクはお店で商品化される最高クラスのAランクよりもさらに上ということになり、鮮度抜群な最上級品が目の前にあるわけで…。これはもう願っても無いラッキー!

大粒過ぎるはらこをガン見しながら、まずはお店の作法に従って白いご飯を一口…。
こちらも関川村の米作り名人が育てた岩船産コシヒカリを、特製の土鍋で炊いたご飯です。
お米の粒が立っていて、ご飯が甘~い!

はらこ丼には一口サイズの「塩引鮭」と「お漬物」付き。
子どもの頃に食べたような、かなり塩気の強い昔ながらの塩引鮭なので、このまま極上の白いご飯と共に食べたくなる気持ちをグッ!と抑えて…。
豪快にドバァ~~~ッと!

極上ご飯の上にのせて、豪快・極上はらこ丼の完成!

あまりの粒の大きさに、スプーンですくってもはらこが次々にこぼれ落ちてしまうのです。
極上品なので、味は申し分ないです。強いて言えば、後味にかなり日本酒や味醂の味が残りますので、奈良漬けを食べても酔っぱらう人には向かないかも知れません。大人の食べ物ですね!

食事の〆の甘酒
今では鮭のお店として有名なきっかわさん、実は米問屋として創業しており、江戸期から昭和にいたるまで造り酒屋を営んでおられます。なので、発酵に関してはエキスパート。米と米麹からつくられる甘酒は、職人さんが付きっきりで4日間温度管理し、ようやく5日目に完成をみる手間暇掛けられたもの。食事の〆まで勢いがあり、手を抜かず、職人の技を感じられる優しい味わいを楽しめました。
- 極上はらこ丼
- 鮭生ハム手まり寿司
- 塩引鮭
- 鮭かぶと煮
- 鮭ひとくち焼漬
- 出汁茶
- お漬物
- 一口甘酒
お土産にも
井筒屋入ってすぐの土間コーナーには、「千年鮭きっかわ」まで足を運ばずとも購入できる、自社製品の数々が置かれていました。先ほどコースの中でいただいた品々も販売されていますので、美味しかったものをお土産にもできて便利ですね。
またお隣の棚では、美味しいご飯が炊けるよう研究されたという、井筒屋のご飯を炊いていたのと同じ伊賀で作られた土鍋も販売されていました。「火加減要らずで吹きこぼれ無し」伊賀焼の「かまどさん」三合炊きで11,330円也!
おしまいに
風情ある町屋の特等席での食事は快適で、今、写真を見ながらも美味しかった時間が蘇り、記事の文章も途中から可笑しなテンションになっている気がします(汗)。あのキラキラ、思い出すとまた食べたくなる…。
県北の風土が育んだ極上の土鍋炊きご飯。手づから炭火で焼く昔ながらの塩引鮭。全てにおいて無添加の手作りにこだわった、千年鮭きっかわの真髄が伺える料理の数々でした。
各席には仲居さんが付き、料理の説明や七輪での焼き具合など教えてくださいますので、それに従えば間違いありません。一風変わったように感じる店内総入れ替えの運営の仕方も、一組ずつ客をもてなすための工夫なのだと感じました。
同じお座敷だった先輩ご夫婦は、竹筒入りの日本酒を注文され、さらに品数の多い13品の鮭料理を楽しんでおられました。ここに来たら、今まで知らなかった鮭料理が楽しめます。極上はらこ丼も捨てがたいが、次回は私も豪勢に、鮭料理13品あたりをいただいてみたくなりました。
年に一度くらい、こういう心身ともに贅沢な時間も良いですね。ご馳走様でした。
Sunday, December 8, 2019|Dawn太 生後1,749日

千年鮭 井筒屋
- 住所:新潟県村上市小町1-12 ※Google Map
- 備考:2017年3月17日OPEN

城下町村上「町屋の人形さま巡り」に行ってきました
桃の節句だったこの日は、「鮭・酒・人情(なさけ)」の県北の城下町・村上に春を告げる、毎年恒例のイベントに行ってきました...
千尾の鮭が吊るされた、千年鮭きっかわ店内の様子などは▲今年の「町屋の人形さま巡り」記事よりどうぞ!
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