十日町市指定史跡【鉢の石仏】
十日町市街地への行き帰りに通る道端に史跡への案内板があり、以前より何度も見ては気になっていたので、少し時間に余裕のあったこの日の帰路途中に立ち寄ってみました。
いざ実際にその場に立ってみると、中世山城を思わせるような広い削平地などもあり、往時はさぞ繁栄したのであろうと思わせる聖地との出会いでした。

圧巻の苔と凛とした空気漂う十日町市指定文化財「鉢の石仏」

十日町市の中心部からおよそ10km離れた標高300~360m地点に、東西に細長くなってある山村・通称「鉢集落」。鉢集落には曹洞宗の禅僧・明屋有照により開山された「

鉢の石仏は、昭和53年(1978年)1月28日に旧・十日町市の文化財に指定されています。

石仏山の山号碑
明屋禅師がこの地で教えを説き、鉢集落はずれの森で野宿をしていたところ、石の上に不思議な「天燈」が降りてきたのでその石を本尊として「照利庵」なる小庵を結び、石仏山として開山したといわれています。

中央のご本尊と、明屋禅師が自ら描き、信州高遠の石工・甚六ほか六名で彫ったと伝わる十三仏(虚空蔵菩薩/大日如来/阿閦如来/阿弥陀如来/勢至菩薩/観音菩薩)

十三仏(釈迦如来|文殊菩薩|普賢菩薩|地蔵菩薩|弥勒菩薩|薬師如来)

ご本尊の背後には苔むす巨木
江戸中期の寛延3年(1750年)に始まった工事は、宝暦12年(1762年)5月15日にご本尊の石堂を造りあげたことにより、13年間にも及ぶ石仏山開山の普請を了しました。

天燈の降りたところにあったという奇石(ご本尊)

不動明王像と座禅堂
座禅堂は、明屋禅師が石仏に入山してから入寂するまでの28年間、仏道の修業のために日夜端座したお堂です。 お堂の中には盤石があり、明屋禅師はこの大石の上に木台を置き、その上に円座を敷いて端座したと伝わります。その折に詠んだ歌が刻まれた碑が座禅堂前に建てられていました。

何となく たじ居り明かす石の上 倦まず進まず 時を退らず 【明屋禅師】
歌碑は文久元年(1861年)秋、鉢村一同の寄進によって建立されています。

石搭前にあった小さな地蔵尊

苔むす石畳の道

境内には補修されたのか?はたまた近年になって造られたものなのか?導水されて池がありました。

山間の地ながら水も豊富なのでしょう。それに加え、境内には巨木が生い茂って日が射さないので、至る所が苔むして、霊場らしい一種独特な雰囲気を醸し出しています。

池脇から十六羅漢方向を見上げる
右上に見える建物は、明屋禅師の居とすべく、宝暦2年(1752年)鉢集落の人々の協力によって建てられた「照利庵」です。
すでに冬の準備で板囲いがなされ、内部は見れない状態でした。
そして写真左手には、大正6年(1917年)建立の「百庚申」があります。これは大正4年に行われた大正天皇の即位礼を記念し、天下泰平・家内繁栄・無病息災・五穀豊穣などを願って鉢村の人々が一家一搭で建てたもの。塚には寄進主の名が刻まれています。
現在は過疎化が進んで50戸あまりの鉢集落ですが、人口ピーク時は130戸ほどあったといいますから、当時も100戸近くあったのでしょう。であるとすれば、文字通りに「百庚申」ですね。

十六羅漢へ向かう道途中にあった獅子狛犬が、神仏習合の時代を物語るようでした。

十六羅漢
造立についての由来や年代など不明だという十六羅漢。明屋禅師の弟子たちが後日になり、阿羅漢の原意に基づいて寄進したものではないかといわれています。

おしまいに
雪深い地ゆえ、晩秋に訪れたのでは時期遅く、すでに案内板なども撤去され、座禅堂の中に無造作に放り込まれておりました。もう少し早い時期に出向けば、それぞれに説明がみられてもう少し勉強できたのかも知れません。逆に、普段は賽銭箱が置かれているので、ご本尊もあんなにはっきりとは拝見できないようなのですが…。
雪囲いによって照利庵内部も拝見できなかったので、十日町方面に出掛ける機会がある時にでも、またリベンジしたい場所になりました。

そして、看板を見つけただけで何の予備知識もなく、石仏を拝見するだけだから…とDawn太も一緒に連れて散策してしまいましたが、一歩境内地に足を踏み入れれば、全く空気感の違う霊地でありました。無数の石からの波動なのか、池の辺りに着く頃にはすっかり疲れてしまい、写真を撮る気力も無くなってしまった私。久しぶりの経験でした。
数ある石仏も見事でしたが、何といっても苔むす様子が見事!次はマクロレンズ持参で、梅雨時期にでも苔狙いでまた訪ねてみようと思います。
Sunday, November 17, 2019|Dawn太 生後1,728日
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