かなり出来上がってきた八ッ場ダム本体工事現場を見学してきました|群馬県
2019年04月13日

平成31年度の完成を目指し、ただいま建設もラストスパートの八ッ場ダム。
平成21年(2009年)の政権交代で政府が八ッ場ダムの建設中止を表明したことにより、その名は広く世間に知れ渡ることになります。
ようやく工事が再開されるようになると、首都圏唯一の建設中ダムとあり、開催される見学ツアーも大人気。
ダムが完成すれば、もう二度と立ち入ることのできない湛水予定地内を巡る「バスツアー」。予約無しで好きな時間に個人単位でダム工事の様子を解説してもらえる「ぷらっと見学会」。特典もいっぱい!な「ファン倶楽部見学会」。夜間照明の中で作業する様子が見学できる「ナイトツアー」。吾妻峡がジオサイトに選定されていることから、八ッ場ダムもジオサイトの一部ということで、みんな一緒に巡ってしまえ!という「ジオパーク見学会」などなど…。
けれど、犬連れではツアー見学には参加できないので、この度は車や徒歩でも楽しめる、超お気軽な「自由見学コ―ス」を巡ってきました。
車や徒歩でみどころポイントを巡る八ッ場ダム自由見学
- やんば見放台
- 八ッ場大橋
- 川原湯展望スペース
- なるほど!やんば資料館
みどころ・その1 「やんば見放台」

ネーミングセンスも抜群な(笑)やんば見放台。ダム工事を進める国土交通省が設けた展望台で、平成27年(2015年)9月2日より一般公開されています。

展望台は左岸(川原畑地区)側にあり、八ツ場ダムの本体建設工事を間近に見下ろせる、高さ約30mの場所に設置されています。

コンクリート製造設備

展望台の最上部から見下ろすダム堤体
日曜日で工事もお休みでしたが、堤体のコンクリート打設工事は、すでにほぼ完了しているように見えました。

完成すると116mの堤高になるよ!

堤体足元には、吾妻川の水を一時的に堰き止める上流仮締切設備や、河川の水を一時的に迂回させる仮排水トンネルの出口がみられます。

上流部の様子。奥に見えている住宅地は、川原湯地区の打越代替地です。

同じく上流方向。今見えている谷間部が、ダムが完成するとダム湖底となって水没する景色です。
手前の橋は湖面1号橋「八ッ場大橋」。奥が、ダム建設中止のニュースが流れた時、十字架状の橋脚が事業のシンボルのように連日TVに映し出されていた湖面2号橋で、現在の「不動大橋」です。下を流れる吾妻川。旧国道の橋とJR吾妻線の鉄橋が、今もそのまま残されているようです。旧国道145号は、工事用通路として活躍しているものと思われます。
やんば見放台からのパノラマ写真。左側に、仮排水トンネルがはっきりと確認できます。
みどころ・その2 「八ッ場大橋」

湖面1号橋。現在の「八ッ場大橋」からは、ダムサイトが真正面から見える絶景ポイントです。

八ッ場大橋は2014年10月1日に開通したよ!
長さは500m弱だから、お散歩距離メーターにもバッチリだね。

歩き出すと間もなく、眼下に剥き出しの岩盤が見えてきます。やんば資料館の展示にもあったように、堤体周辺での堀削岩は同じような状態のもので、距離にして35㎞ほど離れ、過去に何度も噴火を繰り返している浅間山と切り離せないものだといわれます。
浅間山の噴火によって流れ出た土砂が吾妻川に流れ込み、川幅が最も狭まる場所が吾妻渓谷であるため、この辺りで岩屑なだれが堰き止められたことによりできた、浅間山の噴火物が堆積した地質だといわれています。

八ッ場大橋の橋脚下辺りには、JR吾妻線の川原湯温泉駅がありました。

双眼鏡も設置してあります。

真正面に見るダム堤体
向かって左側崖上に「やんば見放台」が設置されています。その他、コンクリートに使う砂や石を運ぶためのベルコトンベア、コンクリートを運ぶケーブルクレーンなど。すでに堤体のコンクリート打設工事が終盤でスッキリして見えますが、高さをつくっている工事段階では、もっと面白い光景だったと思います。

堤内仮排水路は、試験潅水開始後にコンクリートを充填して塞ぐそうです。
八ッ場大橋を渡った先には「なるほど!やんば資料館」のある川原湯地区の打越代替地があります。「現地再建ずり上がり方式」といって、ダム湖のこんな近い場所に、水没予定地の住民の方々の代替地ができていたのですね。
私が今回現地入りしてみて、まず驚いたのが、ダムサイトからあまりに近い場所に代替地があることでした。これまで幾つか見てきたダムの中、ダム湖周辺に移転住民が住み替えた例を知りませんでしたから。
水量を管理するためのダムですから、ダム湖の脇に家があっても洪水の心配はまず皆無でしょう。しかし、無理に人が削平した場所に地滑りなどの心配は無いのでしょうか?何よりも、開湯800年の歴史ある名湯・川原湯温泉を抱える地域。温泉が湧き出すゆえの地質条件や、温泉成分に含まれる硫化水素による影響などはないのでしょうか?
お偉い地質学者さまがしっかりと検証されての結果なのだと思いますが、無理やり整えた代替地に押し込まれたように見え、老婆心ながら素人がそんなことを考えてしまいました。

開湯800年の由緒ある川原湯温泉街跡。左上の代替地の先端に見えるのは、新しくなった共同浴場「玉湯」です。

それにしても、さすが群馬!橋の上は強風過ぎて、真正面に見えるダムサイトとの記念写真に四苦八苦…(汗)

風が強くて目が開けていられません!

シジミ目もドライアイになりそうな「からっ風」の洗礼を受けてしまいました。(笑)
あっ、しまった!あまり風が強くて、ここから見える「不動大橋」の写真撮り忘れている(汗)

なぬっ!
みどころ・その3 「川原湯展望スペース」

「やんば見放台」の対岸に設けられた、もう一つの展望スペースです。こちらは駐車場から展望スペースまでがほぼ平なので、誰でも気軽に見学できる場所だと思います。

先ほどまでいた八ッ場大橋方向

少し横からではありますが、三箇所の中では一番堤体に近づいて見学できる場所だと思います。



みどころ・その4 「なるほど!やんば資料館」

八ッ場ダムカレーと建設中ダムカード|群馬県
こちら方面で開催されるオフ会の行き帰りに通過するものの、いざ利用してみようと思うと時間外。三度目の正直でようやく巡り会えた、完成前から大人気な八ッ場ダムのおいしい話です...
おしまいに

現地に出向く前は、「地中に火薬を埋め、発破していた時期にも見学できたので、そんな様子も見てみたかった」…などと気楽に考えていましたが、実際ここに暮らしていた人があったのだと実感してしまうと、やはり複雑な心境にならざるを得ませんでした。
兎にも角にも完成目前まで来た今の段階では、無事に竣工の日を迎え、さらなる流域の安全に一役買って欲しいものだと思います。そして、いずれ一般公開されるであろう天端を歩ける日を、今から楽しみにしています。

Sunday, March 31, 2019|Dawn太 生後1,497日
関連する記事