旧齋藤家別邸|新潟市
2012年07月04日
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【一般公開】新潟三大財閥の一つに数えられる豪商「斎藤家」の別邸
旧齋藤家別邸は、明治から昭和初期にかけて新潟三大財閥(鍵富家、白勢家、そして今回の齋藤家)の一つに数えられ、貴族院議員を歴任した豪商・四代 齋藤喜十郎氏(1864~1941)が1918年(大正7年)に建てた、避暑のための別邸です。齋藤家の本宅は、かつての東堀通り7番町にありました。その一部は白山公園内に移築再建され、現在は燕喜館として活用されています。戦後、この邸宅は進駐軍による接収を経て、1953年(昭和28年)に加賀田家へと所有が移ります。時代は移り、2005年(平成17年)になると、所有権の移転や、解体の可能性などの話題が持ち上がり、保存を求める市民団体が署名活動を行ったことにより2009年(平成21年)新潟市が購入。今年3月まで建物の耐震化、公開に向けた修復工事がされ、6月9日(土)より、常時一般公開されています。
旧齋藤家別邸探訪
オリの散歩道途中にある掲示板に、公開された旨のポスターが貼ってあり、豪商・豪農の館は幾つか拝見したことがありますが、避暑目的の別邸というのは初めてで、見学してみたいと思った邸宅でした。前記事の “地獄極楽小路” を過ぎ、行形亭(いきなりや)のお隣が、今回の旧齋藤家別邸です。

敷地南側の道路からは、瓦をのせた屋根の塀や土蔵に、当時の風情を感じます。表面はモルタル仕上げですが、その躯体にはレンガが積まれています。

塀の中ほどには、切妻屋根の棟門があります。この棟門と、道路沿いに建つ土蔵の海鼠壁は向かいの北方文化博物館分館の土蔵やお隣の行形亭の土蔵や板塀とともに情緒ある街路景観を創り出しています。

主玄関
玄関脇の壁にはじまり、至る場所に印象的なあじろ壁が見られます。沓脱石は白御影石。式台はケヤキ。
以前の応接室が、現在の受付・事務所になっています。
玄関の間から拝観料を払い進むと、その突き当たりには、紫煙「牡丹孔雀図」が。屏風ではなく、板戸に素晴らしすぎる孔雀の絵です。齋藤家は孔雀がお好きなのか、床の間の掛け軸にも孔雀の絵が多く見られました。

東の間 と 土蔵

牡丹孔雀図を正面にし、右手側には東の間(8畳2間)があります。現在は、齋藤家の紹介などの資料が展示されています。さらにその奥にある土蔵は、家財や骨董品を収蔵した所です。扉の金具には、齋藤家の家紋「丸に剣片食」があしらわれています。床板や柱はヒノキ。

一階大広間
このお宅の醍醐味は何と言っても、この開放的な大空間から眺める庭園の風景でしょう。1階部分は、10畳2間。それに、付随する入縁は半分が畳敷き(6畳半程度)あとは板敷きになっているのでさらに広く、20畳程度の大空間で、風が入り涼しいです。月の字崩しの欄間も印象的。ここからの眺めはまた後ほど。


西の間
主屋の一番奥にある、2間続きの西の間です。至るところに、お茶室のような要素が垣間見える12畳の間と8畳の間は、半月型にくり貫かれた手摺が印象的です。
8畳の西の間からは井戸のある中庭の様子も見えます。我が家の豪邸散策での要チェックポイントであるトイレは残念ながら立ち入り禁止~。

一階座敷・その2
一階部分2つ目のお座敷は、元々は仏間として使用されていた部屋で、神棚付きの床の間がみえます。左写真の棚部分は、仏壇を収めていたようで、襖が上下するとありますが。(?)
主屋2階

2階部分には、1階大広間同様の2間続きの大空間に加え、半分は畳敷き、半分は板敷きの入縁がある大空間。手摺りの形が独特で、外から見た場合、とても印象的に写ります。
2間の間には、菊の花が透かし彫りになった欄間があり、襖や雪見障子には、菖蒲の花が描かれています。
面白いのは、1階部分と2階部分の床の間の書院の位置が逆な事。自然光が入り、美しく見えるような配慮からなのかも知れません。

この大広間の他に、さらにその奥に4畳半のお座敷が1つ備わった3部屋で2階部分ですが、この日は少し予定時刻が早まり、琵琶の演奏会の準備がはじめられた為、お座敷は立ち入り禁止になり、大広間の見学も大急ぎでサラッとだけでした。
建物は、予約があればイベントにも貸し出してくれる仕組みですが、入場の際、それが何も伝えられていないことが残念でした。公開間もない時期でもありますし、今後の対応の改善を希望します。
気を取り直し。。。1階の大広間の一部にはテーブルや椅子が置かれ、ゆっくりとくつろぐ事が出来ます。

庭園を眺めながらの一服
お願いすると、庭園を眺めながらコーヒーやお抹茶を頂くことが可能です。ちびと一緒にお抹茶を~♪私が訪れたのが6月だったので、お茶菓子は季節感あふれるアジサイに露でした。
施設の対応同様に、お抹茶の入れ方も今後に期待します。(^▽^;)
夏だけのことだけを考えた雪国らしからぬ印象のお宅
旧齋藤家別邸は「庭屋一如」つまり、庭園と建物を一体のものと考え、室内から庭園の眺めを楽しむような造りになっています。蒸し暑い夏を涼しく過ごす為に、敷地の中央に池泉を大きくとり、主屋と土蔵をあえて南側に配置した事で、庭園に面する北側の開口部から室内へは日光が殆ど差し込みません。また、主屋が東西に細長い事で、南北方向の風通しが良くなった構造です。上から見ると、雁が並んで飛んでいるような形をしていて、各部屋からは、異なった庭園の様子を楽しむことが出来ます。
夏だけを過ごすための目的で建てられた別邸は、雪国・新潟の家屋には有り得ない、珍しい造りになっていると感じました。
一服した後は、庭園の散策へと出掛けます。庭園編へとつづく。
訪問日:2012年6月24日(日)
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