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秩父札所めぐり|甲午歳総開帳・その11

2014年11月29日

秩父札所甲午総開帳
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32番札所 般若山 法性寺|曹洞宗

奈良時代、行基によって開創されたといわれる法性寺は、岩船山を背後にある山寺です。

寺標を越えるとすぐ、参拝者が集まり見ているのは「秋海棠(しゅうかいどう)」の花。別名を「遥珞草(ようらくそう)」ともいい、『遥珞=仏様が纏う宝石を繋いだ髪飾りや胸飾り』つまり、仏様を飾る花なのだそうです。(花言葉:慈しみの心)
もう少し早い時期ですと、境内の至る場所に咲いていたようですが、11月に入りまだ花が見られたのは、お寺に向かう日陰のこの参道の一部のみでした。

32番札所_法性寺

間もなく見えてくる山門は宝永7(1710年)建立の三間二間半の八脚門。
欅の白木造りで、下階左右には仁王像を安置し「般若山」の山号額が掲げられ、上階は梵鐘が吊るされた札所では唯一の鐘楼門です。

32番札所_法性寺

門を潜り、本堂へ向かうため階段を上がります。
「これより花浄土」の案内どおり、4月にはツツジ、9月には秋海棠、また、苔寺としても有名で、時期になると撮影会など行われているそうです。(参拝で無い場合、300円程度の志納が必要な場合があります。)

石段上にある石灯籠は有章院(7代将軍・徳川家継)|増上寺

32番札所_法性寺

本堂

楼門同様、本堂正面にも般若の面が睨みます。
本堂はまた後ほど御朱印をいただく際に立ち寄るので軽くお参りだけし、先を急ぎます。

32番札所_法性寺

本堂裏手は急斜面になっていて、それを見上げた先に観音堂が祀られている様子が伺えます。

32番札所_法性寺

境内参道途中には、舟の台座に乗った「慈母観世音像」「百観音霊場のお砂場」「毘沙門堂」などがみられ、徐々に緩い坂道を上り、さらに石段道を踏み締めながら観音堂へと至ります。

32番札所_法性寺

観音堂

岩盤上に懸崖造りである観音堂は、三間四方、総欅で宝永4年(1707年)の建立。平成23年(2011年)春に300年ぶりの修復工事が成され、欅の白木もまだ美しいものでした。
本尊は鎌倉時代中期の作と伝えられる 像高137cmの聖観世音菩薩立像。

32番札所_法性寺_観音堂

お堂正面上には冠の上に笠を被り、櫂を持って舟を漕いでいる 珍しい観音像の額が掲げてあります。今回は御開帳でご本尊が望めますが、お前立本尊は「お船観音」と呼ばれるこの形式のもので、伺った日には本堂内で目にすることができました。

32番札所_法性寺_観音堂

その昔、武州豊島郡から豊島権の守の娘が嫁にやって来ました。ある日、娘が実家に帰るために犀が渕を通った時、渕に落ちてしまい危うく溺れそうになります。すると何処からか一艘の舟が近づいて来て娘を助けてくれました。その舟には笠を被った女性が乗っていて、この女性は実は聖観世音の化身だったといいます。それを知った権の守は大変感謝し、この寺の観音様を供養し厚く帰依したそうです。

観音堂の裏の崖に、多くの石仏が安置されています。

32番札所_法性寺_観音堂

砂岩には、蜂の巣のような穴が無数に見られますが、これは「タフォニ」という風化現象です。
太古の昔、秩父地域が海であった頃にできた浸食の跡だと言われ、現在の地形とは全く違った時代があった証拠ですね。

32番札所_法性寺_観音堂

32番札所_法性寺_観音堂

お堂の舞台から見る景色もよいものです。

32番札所_法性寺_観音堂

そんな観音堂を後にし。

32番札所_法性寺_観音堂

奥之院へ

観音堂から下りてすぐの場所や奥之院への分岐点付近にも、大岩の重なり合う下に無数の石塚が祀られ、往時の修行場の跡らしきものを感じます。そして右下写真で、男性が腰を屈めながら戻って来るこの場所が、奥之院への入り口です。

32番札所_法性寺

観音堂からこの岩穴を潜り抜け山道を登ると、その先には「般若のお舟」と呼ばれる巨大な岩石からなる奥之院があるそうなので、私たちも向かうことにします。

32番札所_法性寺

皆さん一様に、「とても危険」や「怖い」と仰っているので、きちんと装備を整えてから向かいました。まして我が家は子連れですので。(ついでに熊鈴も! 私がよく山道脱線するので、旦那からは「迷子鈴」とも言われています。笑)

龍虎岩

上り始めは常に日陰でちょっと粘土質。さらに大石がゴロゴロとした道を数分進むと、大きな岩壁が見られたり、斜面に沿って傾斜した道だったり。
先頭を行く私は道にばかり気を取られて歩いていて、目の前に出現した細い木橋にちょっとビビッていると、後ろから旦那が「上にあるぞ~!」と。

あぁ、これかぁ~!思っていた以上に高さがあるので再びビビる。

32番札所_法性寺_龍虎岩

奥之院までは20分程度掛かるはずが、登り始めて6分程したところで中間地点という「龍虎岩」に到着でした。
木橋の先にベンチがあるので、ちび子に荷物を預けて留守番させ、旦那が先に登ってしまったので、私も後を追う様に登ってみました。(手を振って余裕に見えますが、最初の鎖場だったので、ここを登るのが実は一番怖かったんです、私。)

32番札所_法性寺_龍虎岩

古い看板には「胎内観音」の文字も見られ、岩窟の中には小さな祠が祀られていました。僅かな岩窟の中から、この空を見ながら修行された人があるのでしょうね。

32番札所_法性寺

この後は、5mもあろうかという岩壁を横目に、再び大きな石の転がる「月光坂」を登り、岩盤に直に彫られた石段道を進み。

32番札所_法性寺

視界が開けた先には岩窟があり、十三仏が祀られていました。

32番札所_法性寺

立っては入れない高さの岩窟。奥之院の旅の無事を祈って。

32番札所_法性寺

ここから奥之院まではあと一歩!岩窟を出ると間もなく、大日如来と観音様への分岐点です。

32番札所_法性寺

大日如来へ

まずはここから30m先という、左の大日如来さまを目指してみます。
男性が1人、大岩の間を下りて来ますが、これがすなわち山道です。

32番札所_法性寺

ここを過ぎて程なく…。
おぉ!これかぁ~。やっぱ高いなぁ。

奥之院とは、舟に見立てた一枚の大きな岩磐のことを指し、その舟尾にあたる岩に突き立った場所を鎖に伝って登ると、大日如来がお祀りされているのです。

32番札所_法性寺

最初の鎖場で度胸がついてしまったので、切り込み隊長!早速チャレンジです。
結構な高さはありますが、鎖あり、ステップが十分にあるので楽勝でした。「お~い、大丈夫だよ。登っておいでよ~。」旦那に向かい、軽く手を振っています。

32番札所_法性寺_大日如来

突起岩の最高部、1.5畳程度の場所に安置されている大日如来さまは宝暦2年(1752年)の作。半眼で座禅姿、静かに印を結んでいらっしゃいました。
良いお顔だ!良く見れば、こめかみから頬にかけてと胸の辺りに、墨のようなもので文字が書かれているのが見えます。

32番札所_法性寺_大日如来

後続の旦那がカメラを持って来てくれましたが、過去の記憶が蘇り、この場へは上がらずにそのまま戻ってしまいました。
私といったら、落ちたら危険の緊張感はあるものの、不思議と高さの恐怖心無く、むしろ、温かくて心地よい場所でした。眼下には秩父の山々が広がり、御仏に抱かれたパワースポットです。

32番札所_法性寺_大日如来

台座に腰掛けて一休み…と思った矢先、旋律の光景が目の前に!!!
この高さ、子どもが鎖で上るのは無理!と、最初から決め付けていたのですが、ちび子がスタスタと平気な顔で上って来たのです。

しゃがんで拝んだちび子の背後がスッカスカな事にゾクゾクしつつ、2人で景色を眺め、大日如来さまに仲良くしていただきながら、5分程この場で一緒に過ごしました。

32番札所_法性寺_大日如来

「さっき何処から覗いてたの?」のちび子の問いに、「ここからだよ」と教えると、「ゲッ!これは無理」と。(*≧ω≦*)
あの子の下りて行く光景がまた恐怖!だって、鎖、上手に使えてないんだもん!!!

32番札所_法性寺_大日如来

後で話しを聞くと、「仏様が上で1人なのが可哀想だったから」と。
そんなちび子には、大日さまの「大丈夫だよ!」という声が聞こえたのかも???知れないですね。

32番札所_法性寺_大日如来

無事にちび子が下りて行った後、私はもう少し景色を楽しんでいました。
お天気良くてよかった。

32番札所_法性寺

32番札所_法性寺

大日如来さま、さようなら~!

32番札所_法性寺_大日如来

岩下に下りて休憩している間、10人程が大日如来さま目指してトライする姿を目撃しています。
御開帳時期で参拝者も多いので、奥之院まで足を運ばれる方も結構いますが、皆さん平気で上り、平気で下りて来ます。
何といっても、仏様のご加護の中。
なので、ネット上で人々が言う程、大多数の人にとっては怖い場所ではないはずです。ちなみに、私もかなりの高所恐怖症です。
ただ旦那のように、過去にさらに高い場所での恐怖経験がある人には、それがフラッシュバックとなるので、実際感じる以上の怖さがあったようです。お気の毒さま~。

突起岩の下部に、岩を四角く切って凹みが見られます。修行時に飲用として、ここに雨水でも溜めていたのかも知れませんね。

32番札所_法性寺

奥の院 お船観音へ

山頂部の岩盤は、俗に「般若のお船」といわれる長さ200m、高さ800mにも及ぶ舟形をしたものです。
今度は反対側の、舟の舳先に祀られている観音様を目指して道を戻ります。

32番札所_法性寺

先ほどの分岐点付近から、近道で舟岩上に出ることが出来ます。

32番札所_法性寺_お船観音

なるほど!この光景かぁ~。(矢印部に、写真撮影中の男性が写っています。岩幅が推測できると思います。)

32番札所_法性寺_お船観音

この上を歩くのが、観音様まで一番の近道です。乾いた岩は滑らないですので案ずるより~ですが、何も根性自慢では無いので、ここを歩かなくても観音様までは安全に行く道もあります。
大日如来様の岩場のぼりは無理としても、ここまで来られたなら、観音様は是非とも拝んで帰られて下さい。

32番札所_法性寺_お船観音

面白いのは、この岩場に名前などが刻まれていること。千社札以外のかたちで、自分の名を記したかったのでしょうか?

32番札所_法性寺_お船観音

奥の院 お船観音さまです。

32番札所_法性寺_お船観音

ここも御仏の足元、とても温かな気が満ちていて、高さへの恐怖などは皆無です。

32番札所_法性寺_お船観音

そして、人の存在がちっぽけに見える、雄大な自然の中に身を置ける場所です。
観音様の足元にも、大日岩の下にあったような四角い凹みが切られていました。やはり、飲用水など溜めたのでしょうか?
危険とも、開放的ともいえるこの場所でなら、頭を空っぽにして瞑想できそうな気がします。

舳先部分から下を望むと、庫裡があんなに小さく見えますね。

32番札所_法性寺_お船観音

観音様の見ていた景色。

32番札所_法性寺_お船観音

いつも、小鹿野の町を見守っているのですね。

32番札所_法性寺

道戻り、再び十三仏の岩窟前へ。きっとここも修行の場だったはず。
奥之院の岩盤は、全てこの上ということなんですね。

32番札所_法性寺

奥之院遥拝所

無事に境内まで戻ると、本堂で御朱印を頂戴しました。
境内前には「奥之院遥拝所」が設けてあり、岩上の観音様を拝することが出来ます。奥之院まで歩けない方は、ここからお姿を拝んでみて下さい。

32番札所_法性寺

『願わくは 般若の舟に のりを得ん いかなる罪も 浮かぶとぞ聞く』

32番札所_法性寺

32番札所 法性寺 御朱印
32番札所_法性寺_御朱印

この寺には、埼玉県指定文化財の 長享2年(1488年)「秩父札所 古番付」が所蔵されています。
室町時代中期頃には、すでに札所巡礼が成立していた証です。
33箇所時代も34箇所になっても、札止めは水潜寺(当時は水込)ですが、1番は現在17番の定林寺であり、秩父大宮郷を基点に巡礼が行われていたため、その順番も現在とは異なります。さらに、33箇所だった秩父札所に現在2番の真福寺が加わって34箇所となり、一部のお寺によっては、立地の変化に伴い変更されたところもみられますが、その大部分は、江戸からの巡礼者が増えたことで順路が改定され、現在の札所順となっているのも興味深いところです。

32番札所_法性寺

札所巡りもあと僅か。山歩きでお腹が空いたので、ひとまず先にお昼にしましょう。
--- Monday, November 3, 2014 ---

馬は観音様の眷属(けんぞく=神の使者)であることから、2014年は日本百番観音秩父34ヶ所観音霊場の総開帳の年にあたり、3月1日~11月18日まで、通常秘仏としてある観音様のお姿が拝めます。札所開基が文暦元年(1235年)この年の干支が今年と同じく甲午で、開基から13回目の甲午年となり、60年に1度の特別な開帳年です。

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そふぃあ
Posted by そふぃあ
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